治療が一段落したら、旅行に行きたい。仕事に戻りたい。以前のように運動したい。家族や友人と出かけたい。あるいは、とりあえず何もせずゆっくりしたい。
がんの治療中には、「治療が終わったら○○したい」と考えることもありますよね。では、実際に治療を経験した人たちは、その後の生活についてどんなことを望んでいるのでしょうか。日本や海外の患者アンケートを探してみました。
一番よく出てくるのは「普通の生活に戻りたい」
興味深いのは、海外の調査を見ても、何か特別なことをしたいというより「以前の生活に戻りたい」という声が繰り返し出てくることです。
カナダで13,258人のがん経験者が回答した大規模調査では、66%が治療終了後に少なくとも一つの大きな困りごとを抱えていました。その自由回答を詳しく分析すると、「もう一度元気になりたい」「以前の生活に戻りたい」「新しい日常を受け入れる」といったテーマが浮かび上がりました。
「以前の生活」として挙げられていたのは、仕事だけではありません。家事や庭仕事、運動、スポーツなど、それまで普通にしていた活動をもう一度できるようになりたいという声がありました。
治療が終わったから突然何か新しい人生を始めたい、というより、自分がそれまで過ごしていた日常を取り戻すこと自体が一つの目標になっているようです。
「仕事に戻りたい」は、お金だけの問題でもない
仕事への復帰も、治療後についての調査でよく登場します。
カナダで治療終了時から9カ月後まで患者を追った小規模な研究では、13人中11人が9カ月後までに仕事へ復帰していました。参加者が仕事へ戻る理由には収入だけでなく、日常のリズムを取り戻すこと、人とのつながり、自分らしさを取り戻すことなども含まれていました。
一方で、治療が終わったからといって、すぐ治療前と同じように働けるとは限りません。この研究でも、疲労や痛み、しびれ、認知機能の変化などを抱えながら仕事へ戻った人がいました。
「仕事に戻る」は単なる社会復帰ではなく、自分の日常が戻ってきたと感じる一つのきっかけになる人もいるようです。
「旅行したい」も、日本のがん経験者を対象に調べられている
旅行については、日本の研究があります。
2025年に発表された研究では、がん経験者211人を対象にオンライン調査を行い、「なぜ旅行したいと思うのか」を分析しました。その結果、大きく二つの旅行動機が見つかっています。
一つは、病気から一時的に離れ、新しいスタートを感じるような旅行。もう一つは、リラックスしたり楽しんだりするための旅行です。
さらに興味深いのは、治療段階によって少し違いがみられたことです。治療中の人では病気から離れることや回復につながる旅行への動機が強く、寛解期の人ではリラックスや楽しみを求める傾向がより強くみられました。
旅行は単なる娯楽ではなく、治療中と治療後で少し違った意味を持つこともあるようです。
運動や趣味も「元の生活」の一部
治療後の生活を調べた研究では、運動や趣味の再開という声もたびたび登場します。
英国で血液がんの治療を終えた人たちにインタビューした研究では、参加者は治療終了後、日常の活動や生活習慣、趣味を再開し、旅行へ行くなど、「普通の生活」に戻ろうとしていました。
別の研究でも、治療後に以前から大切にしていた活動や、新しく見つけた活動へ再び参加できることが、「生活が戻ってきた」と感じることにつながっていました。
運動も、単に健康のためだけではなく、「以前できていたことがまたできる」という意味を持つ場合があります。
でも、治療が終わればすぐ「元通り」になるわけではない
ここは調査を読んでいて印象的なところです。
オランダのがん経験者5,710人を対象にした2025年の調査では、診断から2年以上たった人でも49%が「生活を再開することに苦労している」と回答していました。また56%に疲労、47%に体力低下がみられるなど、治療後もさまざまな影響が残っていました。
一方で、66%は「がんによって人生の優先順位が変わった」、44%は「新しい可能性を見つけた」、35%は「以前より人生を楽しんでいる」と回答しています。
つまり「治療前の生活に戻る」だけが、治療後の唯一の姿ではなさそうです。以前していたことを再開する人もいれば、できることを少し変える人、新しくやりたいことを見つける人もいます。
「治療が終わったら何したい?」の世界共通ランキングは、まだない
今回調べてみて分かったのは、「治療が終わったら何をしたいですか?」と聞いて、旅行○%、仕事○%、趣味○%、外食○%……とランキングにした大規模な国際調査は、少なくとも簡単には見つからないということでした。
調査によって質問内容も違います。仕事について詳しく聞いた研究もあれば、旅行だけを調べた研究、治療後に困っていることを自由回答で聞いた調査もあります。そのため、別々の研究から数字を集めて「1位は旅行、2位は仕事」のようなランキングを作ることはできませんでした。
それでも複数の調査を眺めていくと、仕事、家事、運動、趣味、旅行、人との時間など、自分にとって大切だった日常へ戻りたいという声が何度も現れます。
もしかすると「治療が一段落したら何がしたい?」という質問への答えは、ものすごく特別なことではないのかもしれません。
キャンエビのまとめ
- がん治療後の患者を対象にした調査では、仕事、家事、運動、趣味、旅行など、以前の日常を取り戻したいという声が繰り返し報告されています。
- 治療が終わっても疲労や体力低下などが続き、すぐに治療前と同じ生活へ戻れるとは限りません。
- 治療を経験したことで、人生の優先順位が変わった、新しい可能性を見つけたと回答した人たちもいます。
- 「治療が一段落したら何をしたい?」をそのまま尋ねた大規模調査はまだ限られており、旅行・仕事・趣味などを順位づけできるデータは確認できませんでした。
- 調査を通して見えてくるのは、特別なことだけではなく、自分にとって大切な日常をもう一度楽しみたいという思いです。
参考文献
- Unmet cancer rehabilitation needs and access to survivorship services across the cancer continuum(系統的レビュー、2026-05-01)
- A multinational investigation of healthcare needs, preferences, and expectations in supportive cancer care: co-creating the LifeChamps digital platform(コホート研究、2022-11-09)
- Perspectives of survivors: Coping with lifestyle adjustments following cancer diagnosis and treatment(コホート研究、2021-03-17)
- 令和5年度患者体験調査結果報告(公的資料、2025-07-03)
- 仕事事務遂行に関するアンケート等(労働関連資料を含む報告書ページ)(公的資料)
- Cancer survivors’ needs during various treatment phases after multimodal treatment for colon cancer – is there a role for eHealth?(コホート研究、2018-08-23)







