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日本の病院は外国人患者をどこまで受け入れられる? 厚労省の調査から見えたこと

日本の病院は外国人患者をどこまで受け入れられる? 厚労省の調査から見えたこと

日本で暮らす外国人は、2025年末に400万人を超えました。仕事や留学で日本に来た人、家族と長く暮らしている人など、その背景はさまざまです。もちろん、日本で暮らしていれば、風邪をひくことも、けがをすることも、長く治療が必要な病気になることもあります。

では、日本の病院は外国人患者をどのくらい受け入れているのでしょうか。言葉が通じない場合、医療通訳を利用できる病院はどれくらいあるのでしょう。
厚生労働省が公表した「令和7年度 医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」をもとに、日本の医療機関の現状を見てみました。

1か月間で、外国人患者の外来受診は延べ13万件以上

今回の調査では、全国8,168病院のうち5,745病院が、外国人患者への対応体制などに関する調査票Aに回答しました。さらに、外国人患者の受入実績を調べる調査票Bには、2,980病院が回答しています。

2025年9月1日から30日までの1か月間に、調査票Bに回答した病院で受け入れた在留外国人患者の外来受診は、延べ137,929人。新たに入院した患者は7,924人でした。

また、外国人患者を受け入れたと回答した病院のうち、90.5%で在留外国人の外来受診実績があり、36.1%で新規入院の実績がありました。

これらは調査に回答した病院の集計値であり、日本全国の外国人患者の総数ではありません。また、外来の延べ人数には同じ人の複数回の受診が含まれるため、13万人以上の異なる患者が受診したという意味でもありません。それでも、日本に暮らす外国人が実際に多くの医療機関を利用していることが分かります。

医療通訳が院内にいる病院は、まだ少ない

外国人患者が日本の病院を受診するとき、気になることの一つが言葉の問題です。日常会話では日本語に困らない人でも、検査結果や薬の副作用、手術のリスクなどを正確に理解するのは簡単ではありません。
今回の調査では、回答した5,745病院のうち、院内の医療通訳が0人と答えた病院は93.6%でした。つまり、医療通訳が1人以上いる病院は6.4%です。

ただし、これは医療通訳を利用できる病院が6.4%しかないという意味ではありません。電話やビデオを使った遠隔医療通訳を導入している病院もあるからです。
実際、電話医療通訳を利用している病院は13.9%、ビデオ医療通訳を利用している病院は5.3%でした。

一方、外国人患者受入れに関する認証を受けたJMIP・JIH医療機関では、電話医療通訳の利用率が90.8%、ビデオ医療通訳が84.2%と、全体とは大きな差がありました。
医療通訳の整備状況は、病院によってかなり異なります。また、通訳サービスが導入されていても、すべての言語や診療時間に対応しているとは限りません。
外国語での説明が必要な場合は、受診前に病院へ問い合わせておくことが大切です。

翻訳アプリがあれば、医療通訳は不要?

最近はスマートフォンの翻訳アプリも進化しています。受付で症状を伝えたり、病院内の案内を確認したりする際には、便利な道具になるでしょう。
しかし、医療では、言葉を単純に別の言語へ置き換えるだけでは十分でない場合があります。

たとえば、「検査で異常が見つかりましたが、悪性とは限りません」という説明を、患者が「がんではない」と理解してしまったらどうでしょう。反対に、まだ診断が確定していない段階で「がんだ」と受け取ってしまう可能性もあります。

手術や治療方法を選ぶ場面では、病状だけでなく、治療の利益とリスク、ほかの選択肢についても正確に理解する必要があります。
翻訳アプリは役立つ補助的な手段ですが、複雑な説明や重要な意思決定では、医療通訳など適切な支援を利用することが望まれます。

外国人患者への対応を専門に行う部署は2.1%

医療通訳以外にも、外国人患者の受診にはさまざまな調整が必要になることがあります。予約方法の説明、保険資格の確認、医療費の支払い、必要書類の案内などです。
今回の調査では、外国人患者対応の専門部署があると回答した病院は全体の2.1%でした。

一方、外国人患者受入れの拠点的な医療機関では11.6%、JMIP・JIH認証医療機関では81.6%でした。
もちろん、専門部署がない病院でも、一般の受付や医事課、看護師などが対応している場合があります。専門部署の有無だけで、その病院が外国人患者を受け入れられるかどうかは判断できません。
ただ、言葉の支援や事務手続きの調整を専門的に担う体制には、医療機関ごとに違いがあることが分かります。

海外から治療目的で来日する患者もいる

ここまで紹介した在留外国人とは別に、海外から日本で医療を受けるために来日する人もいます。いわゆる医療渡航患者です。
今回の調査では、医療渡航患者を今後積極的に受け入れると回答した病院は1.4%、依頼があれば受け入れると回答した病院は18.9%でした。一方、受入方針が決まっていない病院は60.4%でした。

医療渡航は、在留外国人が普段の生活の中で病院を受診する場合とは事情が異なります。渡航前の診療情報の確認、受入可否の判断、治療費の見積もり、滞在期間の調整などが必要になることもあります。
また、医療渡航患者の疾病分類では、悪性新生物(がん)に分類された患者が延べ561人、47病院で報告されていました。

この数字は2025年9月の調査対象病院における延べ患者数であり、日本全国で1か月に561人の外国人が新たにがん治療を始めたという意味ではありません。それでも、日本でがん治療を受けるために海外から訪れる患者がいることを示す資料です。

外国人患者といっても、必要な支援は同じではない

外国人患者という言葉で一括りにされがちですが、日本で生まれ育った外国籍の人、日本で長年働いている人、留学生、旅行者、医療渡航患者では、必要な支援が異なります。

たとえば、日本の公的医療保険に加入している人なら、基本的には日本人と同じ保険診療の仕組みを利用できます。一方、旅行者や海外から治療目的で来日した人では、保険の適用や診療費の負担が異なる場合があります。
言葉についても同様です。日本語で十分に医療情報を理解できる人もいれば、英語、中国語、ベトナム語など、別の言語での説明を必要とする人もいます。

そのため、外国人患者への対応を考えるときは、国籍だけで判断するのではなく、その人の生活状況や言語、医療制度への理解、必要としている支援を確認することが大切です。

日本の医療情報は、外国人患者に十分届いている?

今回の調査からは、外国人患者の受診が実際に行われている一方、医療通訳や専門部署の整備状況には病院によって大きな違いがあることが分かりました。

ただし、この調査は主に医療機関側の受入状況を把握したものです。外国人患者が診察の説明をどの程度理解できたのか、受診先を探す際に何に困ったのか、必要な情報が母語で得られたのかといった患者自身の経験を、この数字だけで判断することはできません。

病院での対応と同じくらい重要なのが、受診する前に必要な情報を得られることです。どの病院を受診すればよいのか、医療通訳は頼めるのか、保険は使えるのか、医療費はいくらかかるのか。こうした疑問に、外国人患者が自分で答えを見つけられる環境も必要でしょう。

がんのように長期的な治療が必要な病気では、診断後の仕事や生活、家族との関係についても情報が必要になります。医療機関での支援だけでなく、日常生活と医療をつなぐ情報も欠かせません。
日本に暮らす外国人が増えている今、外国人患者への対応は、一部の特別な病院だけの問題ではなくなりつつあります。

数字の向こうにいる患者のこと

今回の調査では、在留外国人患者の外来受診が1か月で延べ13万件以上報告されました。一方、院内に医療通訳がいる病院は6.4%、電話医療通訳を利用している病院は13.9%でした。
こうした数字を見ると、日本の医療機関では外国人患者の受入れが実際に行われている一方、言語支援の体制にはまだ差があることが分かります。

もちろん、すべての外国人患者が通訳を必要としているわけではありません。また、医療通訳の導入率だけで、診療の質や患者の満足度を判断することもできません。
大切なのは、必要なときに適切な支援を受けられること。そして、患者が自分の病気や治療について理解し、納得して医療を受けられることではないでしょうか。
国籍や使う言語が違っても、病気になったときに不安を感じることは同じです。日本で暮らす人が安心して医療を受けられる環境を、これからも考えていく必要がありそうです。

参考文献・出典

1. 厚生労働省(2026)「令和7年度 医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査 結果報告書」 調査結果の公表ページ

2. 出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」 出入国在留管理庁の公表ページ

3. 厚生労働省「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」 厚生労働省・外国人患者の受入れに関する情報

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