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外国人患者は日本の病院で医療通訳を利用できる?

外国人患者は日本の病院で医療通訳を利用できる?

日本でがんの診断を受けたり、治療を続けたりするとき、日本語での説明を十分に理解できるか不安になる人もいるでしょう。日常会話には困らなくても、病名や治療方法、副作用についての説明となると、急に難しく感じることもあります。

日本の病院では、医療通訳を利用できる場合があります。 病院に通訳者がいる場合もあれば、電話やビデオ通話で外部の通訳者につなぐ場合もあります。また、自治体やNPOなどが通訳を支援している地域もあります。

ただし、どの病院でも同じサービスを利用できるわけではありません。この記事では、医療通訳にはどんな方法があるのか、病院に通訳者がいない場合はどこへ相談できるのか、翻訳アプリや家族による通訳はどう考えればよいのかを紹介します。

医療通訳は、普通の通訳と何が違う?

医療通訳は、患者と医療者の間に入り、診察や治療に関する説明、質問などを別の言語で伝える役割を担います。病名や薬の名前を訳すだけでなく、患者が何を心配しているのか、医師がどのような選択肢を説明しているのかを、できるだけ正確に伝えることが求められます。

医療には専門用語が多く、同じ言葉でも日常会話とは意味が異なることがあります。さらに、治療への同意や病状の説明では、本人が内容を理解し、自分の意思を伝えられることが重要です。そのため、外国語が話せる人なら誰でも医療通訳ができる、というわけではありません。

厚生労働省は、医療通訳者の育成カリキュラムや教材を公開しています。そこでは、医学的な知識だけでなく、通訳技術や守秘義務、医療現場での倫理なども扱われています。

病院に医療通訳を頼むには?

まずは受診する病院に、希望する言語で医療通訳を利用できるか確認します。病院によっては、国際診療部門や外国人患者向けの窓口が設けられています。専用窓口が見つからなければ、予約窓口や患者相談窓口などに問い合わせる方法があります。

医療通訳には、主に次のような方法があります。

  • 院内の医療通訳者: 病院に所属する通訳者が、診察や説明の場に同席する。
  • 外部からの派遣通訳: 病院が外部の通訳者を手配し、診察などに同席してもらう。
  • 電話通訳: 医療者と患者が、電話でつながった通訳者を介して会話する。
  • ビデオ通訳: タブレットなどを使い、画面越しに通訳者と会話する。

これらを複数組み合わせている病院もあります。たとえば、普段の診察では電話通訳を使い、重要な治療説明では対面通訳を手配する、といった対応が考えられます。ただし、実際にどの方法を利用できるかは病院の体制によって異なります。

また、通訳が無料とは限りません。病院が費用を負担する場合もあれば、患者に費用の一部または全部が請求される場合もあります。対応言語や予約の必要性とあわせて確認しておきたいところです。

地方の病院でも、電話やビデオ通訳を利用できる?

医療通訳者が常駐していない病院でも、遠隔通訳を利用できる場合があります。電話やビデオ通話で外部の通訳者につなぐ方法なら、通訳者が病院まで移動する必要がありません。
厚生労働省は、国内で通訳者を確保しにくい言語に対応するため、「希少言語に対応した遠隔通訳サービス」を実施しています。2026年度も継続されており、全国の医療機関が登録して利用する仕組みです。

ただし、これは患者が直接申し込んで利用するサービスではありません。医療機関側で事前登録などの手続きが必要で、対応する言語や利用方法にも条件があります。
受診する病院に希望する言語の通訳者がいない場合は、電話・ビデオ通訳を利用できないか、また国の遠隔通訳サービスの対象になるかを尋ねてみるとよいでしょう。

公式案内:厚生労働省「希少言語に対応した遠隔通訳サービス」

自治体やNPO、医療通訳ボランティアの支援もある

病院だけでなく、自治体や地域の団体が医療通訳を支援している場合もあります。
たとえば神奈川県では、NPO法人「多言語社会リソースかながわ(MICかながわ)」などと協力して、医療通訳ボランティアの派遣制度を運営しています。県の案内では、72の協定医療機関を対象に、中国語、英語、ベトナム語、ポルトガル語など13言語の通訳に対応しています。

この制度では、協定医療機関からの依頼を受けて通訳者を派遣します。派遣経費は2件2時間あたり3,000円(税別)で、患者が負担する金額は病院によって異なります。誰でも直接通訳者を呼べる制度ではないため、利用したい場合は協定医療機関の相談窓口へ確認します。

公式案内:神奈川県「多言語による情報提供・医療通訳派遣システム事業」

このように、地域によっては医療機関と自治体、NPOが連携して通訳を手配する仕組みがあります。
一方、国際交流協会や外国人相談センターなどでは、病院への問い合わせや地域の支援制度を探すための相談に対応していても、診察室での医療通訳までは行っていない場合があります。

たとえば埼玉県の「外国人総合相談センター埼玉」は多言語での相談に対応していますが、厚生労働省の案内では、専門医療通訳ではないことが明記されています。外国語で相談できる窓口と、医療通訳を提供する窓口は、分けて考える必要があります。
住んでいる地域で相談先を探したい場合は、厚生労働省が公開している都道府県別の相談窓口一覧が参考になります。

厚生労働省「都道府県相談窓口一覧」

各窓口の対応内容は異なるため、「病院で医療通訳を利用したい」「医療通訳を紹介している団体を知りたい」と具体的に伝えると、相談の目的が分かりやすくなります。

翻訳アプリやAI通訳は使える?

最近は、スマートフォンの翻訳アプリで会話を翻訳したり、AIを使って文章や音声を別の言語に変換したりできるようになりました。病院でも、受付で用件を伝える、予約時間を確認する、簡単な質問をするといった場面では役立つことがあります。

ただし、翻訳アプリが使えることと、医療上の重要な説明を正確に理解できることは別です。
たとえば「副作用が起こる可能性があります」と「副作用が起こります」では意味が違います。「薬を中止しないでください」と「薬を中止してください」なら、意味は正反対です。こうした言葉が誤って訳されると、治療や薬の使い方に影響する可能性があります。

2014年に発表されたGoogle翻訳の精度を調べた研究でも、医療に関する短い文章で誤訳が確認されています。ただし、当時の翻訳技術と現在のAI翻訳では性能が異なるため、その研究結果をそのまま現在のアプリに当てはめることはできません。

現在の翻訳アプリも、言語の組み合わせや専門用語、周囲の騒音、話し方などによって結果が変わる可能性があります。また、病状や検査結果などの個人情報を外部のサービスへ入力する場合は、情報の取り扱いにも注意が必要です。
翻訳アプリは便利な補助手段ですが、がんの診断、治療方針、手術の同意、抗がん剤の副作用など、重要な説明を受ける場面では、医療通訳を利用できないか病院に相談することをおすすめします。

家族や友人に通訳を頼んでもいい?

日本語が得意な家族や友人に、病院へ付き添ってもらう人もいるでしょう。普段から事情を知っている人が一緒にいることで、安心できる場合もあります。
ただし、家族や友人が日本語を話せることと、医療の説明を正確に通訳できることは同じではありません。

厚生労働省が公開している「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」では、家族や友人による通訳について、医療用語や通訳技術に関する知識が不足している可能性や、説明の内容が意図せず変わって伝わるリスクなどが指摘されています。

がんの診断や治療では、家族にとっても受け止めるのが難しい話を聞くことがあります。本人を心配するあまり、厳しい説明をやわらかく伝えてしまったり、反対に医師の説明を必要以上に深刻に受け取ってしまったりする可能性もあります。
また、患者本人が家族には知られたくないことを医師に相談したい場合もあります。家族が通訳をしていると、その話を切り出しにくくなるかもしれません。

家族が付き添うこと自体が問題なのではありません。家族には家族として支えてもらい、必要な場面では専門の医療通訳者に説明を訳してもらうという方法もあります。

がんの治療説明が十分に分からなかったときは

医療通訳を利用していても、専門的な説明を一度ですべて理解するのは簡単ではありません。これは日本語が母語の患者でも同じです。
特に、手術、抗がん剤、放射線治療などの説明では、治療の目的や期待できる効果だけでなく、副作用や別の選択肢についても理解する必要があります。

説明を聞いて分からないことが残った場合は、質問する時間を設けてもらったり、もう一度通訳を交えて説明してもらったりすることができます。説明資料を希望する言語で用意できるか、通訳を使って再度確認できるかも相談してみてください。

通訳がすぐに手配できない場合でも、緊急性のない説明や同意について、十分に理解できる方法を病院と相談することが大切です。一方、緊急の治療が必要な場合は、説明や通訳の方法について医療者とその場で調整する必要があります。
日本語が十分に分からないからといって、疑問を残したまま治療を選ばなければならないわけではありません。どのような方法なら説明を理解しやすいか、病院に伝えることができます。

キャンエビのまとめ

  • 日本の病院では、院内の医療通訳者や、電話・ビデオ通訳などを利用できる場合があります。
  • 専任の通訳者がいない病院でも、外部の遠隔通訳サービスを利用できることがあります。
  • 自治体やNPOによる医療通訳の派遣制度がある地域もあります。
  • 外国人相談窓口は、必ずしも診察室での医療通訳に対応しているわけではありません。
  • 翻訳アプリは便利ですが、重要な治療説明では誤訳のリスクも考える必要があります。
  • 家族や友人の付き添いと、専門の医療通訳者による通訳は、それぞれ役割が異なります。

医療通訳の利用方法は、病院や地域によってさまざまです。まずは受診先の病院に希望する言語を伝え、利用できる通訳方法を確認してみてください。病院に通訳者がいない場合でも、電話通訳や地域の支援制度など、別の方法が見つかることがあります。

参考文献

  1. 厚生労働省「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000173230_00003.html
  2. 厚生労働省「医療通訳に関する資料 一覧」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000056944.html
  3. 厚生労働省「希少言語に対応した遠隔通訳サービス」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/newpage_00015.html
  4. 神奈川県「多言語による情報提供・医療通訳派遣システム事業」
    https://www.pref.kanagawa.jp/docs/k2w/cnt/f544/index.html
  5. 厚生労働省「都道府県相談窓口一覧」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33139.html
  6. Patil S, Davies P. Use of Google Translate in medical communication: evaluation of accuracy. BMJ. 2014;349.
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4266233/

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