がんと診断されたとき、家族や友人にどう伝えればいいのか、迷う人もいるでしょう。心配をかけたくない、まだ自分でも気持ちの整理がついていない、詳しく聞かれても答えられない。そもそも、誰かに話すこと自体がつらい場合もあります。
病気のことを、いつ、誰に、どこまで伝えるかは、基本的に本人が決めることです。診断されたその日に知らせる必要はありませんし、すべての人に同じように説明する必要もありません。
一方で、治療が始まると、家族に家事をお願いしたり、友人との約束を変更したりする場面が出てくるかもしれません。この記事では、伝えるタイミングや相手に応じた話し方、実際に使える言葉の例を紹介します。
がんと診断されたら、すぐに家族へ伝えるべき?
診断を受けた直後は、本人もまだ状況を十分に理解できていないことがあります。追加の検査が必要だったり、治療方針が決まっていなかったりする場合もあるでしょう。
国立がん研究センターの「がん情報サービス」でも、診断直後に周囲へ急いで伝える必要はなく、治療方針やスケジュールが決まり、落ち着いて話せるようになってからでもよいと案内しています。
ただし、通院の付き添いや家事、子どもの世話など、すぐに誰かの協力が必要な場合は、まず頼りたい相手に伝えておくとよいでしょう。家族だから必ず最初に話さなければならない、というわけでもありません。家族より先に、親しい友人に相談したい人もいると思います。
まだ詳しいことが分からない場合は、そのまま伝えれば大丈夫です。
「今日、病院でがんだと言われたんだ。これから詳しい検査を受けるから、まだ治療のことは決まっていない。分かったらまた話すね」
最初から病状や今後の見通しを詳しく説明しようとすると、話す側も疲れてしまいます。今分かっていることだけを伝え、続きは後日にしてもよいのです。
誰に、どこまで伝えるかを考える
病気のことを伝える相手は、必ずしも家族や親しい友人だけではありません。通院のために予定を調整してもらう人、家事や育児を手伝ってもらう人、しばらく会えなくなる人など、生活の中で必要な相手が出てくることもあります。
考えるときには、次のように整理してみると分かりやすいでしょう。
- 気持ちを話したい人: 不安なときに話を聞いてほしい家族や友人
- 生活面で協力してほしい人: 家事、買い物、送迎、子どもの世話などを頼みたい人
- 予定の調整が必要な人: 仕事の関係者や、約束をしている友人
- 今は知らせたくない人: 病気のことを話す必要を感じていない相手
また、病名だけを伝えるのか、治療内容まで話すのか、検査結果や病状の変化も知らせるのかは、相手によって変えてかまいません。
例えば、親しい友人にはがんと診断されたことを話し、知人には「しばらく治療のために予定が立てにくい」とだけ伝える方法もあります。
一度伝えたからといって、その後の検査結果や病状をすべて報告する必要もありません。 どこまで話すかは、その都度決めてよいことです。
配偶者やパートナー、親にはどう伝える?
配偶者やパートナー、同居している家族には、治療によって生活がどう変わる可能性があるのかを伝えておくと、具体的な協力を相談しやすくなります。
例えば、治療中は疲れやすくなるかもしれない、通院の日は帰宅が遅くなるかもしれない、家事をお願いする日があるかもしれない、といったことです。
「来月から治療が始まることになったよ。通院の日は疲れて家事ができないかもしれないから、そのときは少し手伝ってほしい」
離れて暮らす親に伝える場合は、心配して何度も電話をかけてきたり、すぐに会いに来ようとしたりすることもあるでしょう。そんなときは、今の状況だけでなく、どのように連絡を取りたいかも伝えておくとよいかもしれません。
「がんと診断されたけど、今は先生と治療の相談をしているところ。心配だと思うけど、毎日電話するのはちょっと大変だから、何か変わったことがあったらこちらから連絡するね」
反対に、親や家族との関係が複雑で、病気について話したくない場合もあります。家族だから必ず詳しく知らせなければならないわけではありません。誰に話すと自分が安心できるか、誰の協力が必要かを考えて決めてよいのです。
子どもには、いつ、どう伝えればいい?
子どもへの伝え方は、特に迷うところかもしれません。「がんと聞いて怖がるのでは」「学校生活に影響するのでは」と考え、できれば知らせたくないと思う親もいるでしょう。
国立がん研究センターのがん情報サービスでは、子どもに病気を伝えるかどうかに一つの正解はなく、伝えられないときに無理をする必要はないと説明しています。一方で、子どもは親の体調や家庭の雰囲気の変化に気づくこともあるため、話す場合は年齢や理解度に合わせて、分かっていることを具体的に伝えることが勧められています。
特に大切なのは、子ども自身が病気の原因ではないこと、がんは人にうつる病気ではないこと、そして今後の生活で何が変わるのかを説明することです。
小さな子どもには、短く具体的に
「お母さんの体に、がんという病気が見つかったんだ。病院で治療をするから、疲れて休んでいる日もあると思う。でも、あなたのせいじゃないし、うつる病気でもないよ」
年齢が上がった子どもには、分かっていることをもう少し詳しく
「がんと診断されて、これから治療を受けることになった。まだ決まっていないこともあるけど、分かったことは少しずつ話すね。聞きたいことがあったら、いつでも聞いて」
子どもから「治るの?」「死んじゃうの?」と聞かれることもあるかもしれません。答えが分からない場合は、無理に安心させようとせず、「今はまだ分からないから、先生に聞いてみるね」と伝える方法もあります。
また、子どもが病気について友達や学校の先生に話す可能性もあります。秘密を守る責任を子どもだけに負わせるのではなく、誰に話してよいかを一緒に考えておくとよいでしょう。
子どもへの伝え方に迷ったときは、主治医や看護師、がん相談支援センターにも相談できます。
友人には、どんなふうに伝える?
友人への報告は、必ずしも改まった話にする必要はありません。普段の会話の中で伝える人もいれば、LINEやメールで知らせる人もいるでしょう。
例えば、親しい友人にはこんな伝え方もできます。
「実は最近、がんだと分かったんだ。これから治療が始まるから、しばらく予定が変わることもあると思う。今までどおり、普通に話してくれたらうれしいな」
まだ病気について詳しく話したくない場合は、もう少し短くても十分です。
「ちょっと病気が見つかって、しばらく通院することになったんだ。詳しいことは落ち着いたら話すね」
友人に知らせる理由も、人によって違います。気持ちを聞いてほしい場合もあれば、今後の予定が変わるかもしれないことだけを伝えたい場合もあります。自分が何を伝えたいのかに合わせて、言葉を選べばよいでしょう。
LINEやメールで伝えてもいい?
もちろん、対面で話さなければならない決まりはありません。直接会うと泣いてしまいそう、相手の反応を見るのがつらい、何度も同じ説明をしたくない。そんなときは、LINEやメールを使う方法もあります。
文章なら、自分のペースで言葉を考えられますし、相手も内容を落ち着いて読むことができます。
複数の人にまとめて知らせたい場合は、例えば次のような文面が考えられます。
「みんなにお知らせです。最近がんと診断されて、これから治療を受けることになりました。しばらく会えないこともあると思うけど、体調を見ながら過ごしていくつもりです。今は一人ひとりに返信する余裕がないので、返事が遅くなっても気にしないでね」
ただし、グループLINEでは、誰がその情報を見られるのかを確認しておきましょう。病気について知らせる範囲を限定したい場合は、個別に送る方が安心です。
また、信頼できる家族や友人に、ほかの人への連絡を頼む方法もあります。その場合は、誰に、どこまで話してよいのかをあらかじめ伝えておきましょう。
心配されすぎたり、望まない助言をされたりしたら?
がんと診断されたことを伝えると、相手が驚いたり、泣いてしまったり、強く心配したりすることがあります。なかには、知人の治療経験を話してくれたり、インターネットで見つけた健康法を勧めてくれたりする人もいるでしょう。
善意からの言葉だと分かっていても、受け止めるのが負担になることはあります。
そんなときは、相手を傷つけないようにすべての話を聞き続ける必要はありません。
心配されすぎて疲れてしまうとき
「心配してくれてありがとう。今は治療のことを先生と相談しながら進めているから、あまり心配しすぎないでね」
健康法や治療法を勧められたとき
「教えてくれてありがとう。でも、治療のことは主治医と相談して決めているから、今は大丈夫だよ」
病状について詳しく聞かれたとき
「そのあたりは、今はあまり人に話していないんだ。話したくなったら、こちらから伝えるね」
また、病気についてほかの人に知られたくない場合は、最初に伝えておくことも大切です。
「まだ限られた人にしか話していないから、ほかの人には私から伝えるまで内緒にしておいてくれる?」
相手が心配してくれることと、自分がすべての質問に答えなければならないことは別です。話したくないことは、話さなくてもかまいません。
何度も同じ説明をするのが大変なときは
病気のことを知らせた後、家族や友人から「検査はどうだった?」「次の治療はいつ?」「体調は大丈夫?」と連絡が来ることもあるでしょう。
ありがたい反面、同じ説明を何度も繰り返すのは疲れるものです。特に治療が始まると、体調によっては返信すること自体が負担になるかもしれません。
そんなときは、連絡をまとめる方法もあります。例えば、家族の中で一人にだけ詳しく伝え、ほかの人への連絡をお願いする。友人には、治療の区切りなどにまとめて近況を知らせる。LINEで使える短い文章を用意しておくのも便利です。
「今のところ、予定どおり治療を続けているよ。体調を見ながら過ごしているので、また落ち着いたら連絡するね」
毎回の検査結果を知らせる必要はありませんし、連絡が来るたびにすぐ返事をする必要もありません。返信が難しいときは、「しばらく返信が遅くなると思う」と先に伝えておく方法もあります。
どう伝えればいいか分からないときは、相談できる場所もある
家族に話したいけれど言い出せない、子どもにどう説明すればよいか分からない、病気を伝えた後に家族との関係がぎくしゃくしてしまった。そんな悩みも、がん相談支援センターで相談できます。
がん相談支援センターは、がん患者本人だけでなく、家族も利用できる相談窓口です。病気や治療についての相談だけでなく、家族とのコミュニケーションや、治療中の生活についても相談できます。
キャンエビのまとめ
- がんと診断されたことを、すぐに全員へ知らせる必要はない。誰に、いつ伝えるかは自分で決めてよい
- 診断直後で詳しいことが分からない場合は、今分かっていることだけを伝えればよい
- 家族や友人には、相手との関係や必要な協力に応じて、伝える内容を変えてよい
- 対面で話すのがつらければ、LINEやメールで伝える方法もある
- 病状や検査結果をすべて報告する必要はない。話したくないことは話さなくてもよい
- 伝え方に迷ったときは、がん相談支援センターでも相談できる







