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がんの不安を和らげる「認知行動療法」とは? 効果を研究で検証

がんの不安を和らげる「認知行動療法」とは? 効果を研究で検証

がんの治療中や治療後、再発への不安が頭から離れなくなることがあります。検査が近づくと眠れなくなったり、体のちょっとした変化が気になって何度も調べたり。そんな不安に対して、認知行動療法(CBT)という心理療法が役立つことが、複数の研究で報告されています。

認知行動療法は、無理に前向きになったり、悪いことを考えないようにしたりする方法ではありません。不安が強くなるときの考え方や行動を振り返り、対処する方法を身につけていく心理療法です。

実際にどのくらい効果があるのでしょうか。がん患者を対象とした研究をもとに、再発への恐怖や不安、気分の落ち込みへの効果を見ていきます。

認知行動療法では、実際に何をする?

認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy:CBT)は、ものごとの受け止め方と行動の関係に注目する心理療法です。精神科や心療内科などで行われ、心理士が担当する場合もあります。

例えば、がんの治療後に体のどこかが痛くなったとします。「もしかして再発?」と不安になり、インターネットで症状を検索する。調べているうちに怖い情報が目に入り、ますます不安になって、さらに検索を続けてしまう。そんな経験をする人もいるでしょう。

認知行動療法では、このような場面を取り上げて、何がきっかけで不安が強くなり、どんな行動につながったのかを整理します。頭に浮かんだ考えを書き出したり、別の可能性を検討したり、不安を強めている行動を少しずつ変えたりすることがあります。

大切なのは、「再発するはずがない」と自分に言い聞かせることではありません。がんの再発は現実に起こり得ることであり、その心配を完全になくすことが目標とは限りません。

例えば、気になる症状があれば医師に相談することは必要です。一方で、何度も検索して不安が増しているなら、検索する回数やタイミングを見直すことが役立つかもしれません。認知行動療法では、こうした具体的な対処方法を、専門家と一緒に考え、練習していきます。

再発への恐怖は、認知行動療法で軽減する?

がん患者やがん経験者の再発への恐怖は、英語で Fear of Cancer Recurrence(FCR)と呼ばれています。再発を心配すること自体は珍しくありませんが、不安が強くなり、日常生活に影響する場合もあります。

この再発への恐怖に対して、認知行動療法がどの程度役立つのかを調べた研究があります。

2024年にオンライン公開された系統的レビューとメタ解析では、32件のランダム化比較試験、計3,360人のがん患者・がん経験者のデータが分析されました。その結果、認知行動療法を受けた人たちは、比較対象となった人たちよりも、再発への恐怖が統計的に有意に低くなっていました。

効果量はHedges’ gで−0.65と報告されています。これは研究で使われる標準化された効果の大きさを表す数値で、不安が65%減ったという意味ではありません。平均すると、中程度の改善が認められたと解釈できます。

ただし、この研究には注意点もあります。32件の試験のうち28件は、研究方法などによる結果の偏りが生じるリスクが高いと評価されていました。そのため、効果があることを示す結果ではあるものの、その大きさについては慎重に考える必要があります。

出典:Cognitive-behavioural therapy effectiveness for fear of cancer recurrence: systematic review and meta-analysis

乳がん患者を対象とした研究でも効果が報告されている

乳がん患者と乳がん経験者に絞った研究でも、認知行動療法の効果が調べられています。

2024年にオンライン公開され、2025年に雑誌掲載されたメタ解析では、13件のランダム化比較試験、計1,447人のデータが分析されました。その結果、認知行動療法を受けた人たちは、比較対象となった人たちよりも再発への恐怖が低く、効果量はHedges’ gで−0.44でした。

ただし、研究全体のエビデンスの確実性は「低い」と評価されています。試験ごとに介入方法や評価方法が異なり、結果に偏りが生じる可能性もあったためです。

この研究では、マインドフルネスを取り入れた認知療法で効果が認められたことも報告されています。マインドフルネスは、浮かんできた考えや感情を無理に消そうとせず、今の自分の状態に注意を向ける方法です。

ただし、この結果だけで、マインドフルネスを取り入れた方法がすべての患者に最も適していると判断することはできません。

出典:Effectiveness of Cognitive Behavioral Therapy on Fear of Cancer Recurrence in Breast Cancer: A Systematic Review and Meta-analysis

効果は治療が終わった後も続く?

認知行動療法を受けている間は不安が軽くなっても、その効果がすぐになくなってしまうのでは、と思うかもしれません。

2019年に『Journal of Clinical Oncology』に掲載された系統的レビューとメタ解析では、再発への恐怖に対する心理的介入の効果が、介入終了後にも続くかどうかが調べられました。

この研究では、23件の比較試験を分析し、介入直後だけでなく、その後の追跡調査でも再発への恐怖の軽減が認められました。効果量は介入直後が0.33、追跡時点が0.28で、どちらも小さいながら統計的に有意な改善でした。追跡期間は平均約7か月でした。

また、この研究では、従来型の認知行動療法よりも、心配や反すうなどの思考との付き合い方に焦点を当てた比較的新しい認知行動療法の方が、介入直後の効果が大きいという結果も報告されています。

ただし、この研究は認知行動療法だけでなく、さまざまな心理的介入をまとめたものです。また、追跡期間が短い研究ほど効果が大きい傾向もあり、数年単位で効果がどの程度続くかについては、さらに研究が必要です。

出典:Effect of Psychological Intervention on Fear of Cancer Recurrence: A Systematic Review and Meta-Analysis

再発不安だけでなく、落ち込みや生活の質にも効果はある?

認知行動療法の研究では、再発への恐怖だけでなく、全般的な不安や抑うつ、生活の質(QOL)についても調べられています。

2024年に公表された系統的レビューとメタ解析では、がん患者を対象とした認知行動療法の効果が検討され、精神的な健康状態やQOLの改善が報告されています。改善の大きさは評価項目によって異なり、QOLへの効果は比較的小さいものでした。

QOLは、体調だけでなく、日常生活や社会生活、気持ちの状態などを含む幅広い概念です。不安が軽くなったからといって、生活上のすべての問題が改善するわけではありません。

また、がんの種類や治療の段階、もともとの不安の強さ、受けるプログラムの内容によっても、効果は異なる可能性があります。研究全体では改善が認められていても、すべての人に同じ変化が起こるという意味ではありません。

出典:The efficacy of cognitive behavioral therapy for mental health and quality of life among individuals diagnosed with cancer: A systematic review and meta-analysis

オンラインの認知行動療法でも効果はある?

認知行動療法には、対面で専門家と話す方法のほか、インターネットを使ったプログラムもあります。通院の負担が大きい人や、近くに専門家がいない人にとっては、オンラインで受けられることが利点になります。

2024年に発表された系統的レビューとメタ解析では、がん患者を対象とした43件の研究を分析し、専門家の支援があるデジタル心理介入と、支援のない自習型のプログラムを比較しました。

その結果、専門家の支援があるプログラムでは、心理的なつらさ、不安、疲労の軽減が認められました。一方、支援のないプログラムでは、これらの項目について統計的に有意な改善は確認されませんでした。抑うつとQOLについては、どちらの形式でも改善が報告されています。

また、専門家の支援があるプログラムの方が、参加を継続する割合も高いという結果でした。

ただし、この研究には認知行動療法以外の心理的介入も含まれています。そのため、「オンラインCBTは専門家が付けば必ず効果が高い」とまで言えるものではありません。また、対面とオンラインの効果が同等かどうかを、この研究だけで判断することもできません。

出典:Guided versus non-guided digital psychological interventions for cancer patients: A systematic review and meta-analysis of engagement and efficacy

日本で認知行動療法を受けるには?

ここまで研究結果を紹介してきましたが、実際に認知行動療法を受けてみたいと思ったら、どこに相談すればよいのでしょうか。

まずは、がん治療を受けている病院の主治医や看護師に、認知行動療法などの心理的な支援を希望していることを伝える方法があります。

また、がん相談支援センターでも、心のケアを行う専門家や相談先について情報を得られます。がん相談支援センターは無料で利用でき、通院先以外の病院に設置されたセンターにも相談できます。

全国のがん相談支援センターを探す|国立がん研究センター

認知行動療法は、精神科や心療内科などで医師や心理士が担当する場合があります。ただし、すべての施設で提供されているわけではありません。病院の公式サイトで心理療法の案内を確認し、認知行動療法を受けられるか問い合わせてみましょう。

近くの精神科や心療内科を探す場合は、厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)も利用できます。

医療情報ネット(ナビイ)で医療機関を探す

費用については、認知行動療法のすべてが健康保険の対象になるわけではありません。保険診療として受けられる場合もありますが、対象となる病気や実施方法、施設の体制などによって条件が異なります。自費のカウンセリングとして提供される場合もあるため、予約前に保険適用の有無と費用を確認しておきましょう。

なお、不眠や落ち込みが強く、日常生活に大きな支障が出ている場合には、認知行動療法だけでなく、医師による診察や薬物療法などが必要になることもあります。自分を傷つけたい気持ちがある場合や、身の安全を保てない場合は、通常の予約を待たずに救急医療機関などへ速やかに相談してください。

キャンエビのまとめ

認知行動療法は、がん患者の再発への恐怖や不安、気分の落ち込みを軽減する方法として研究が進められています。複数のメタ解析で効果が報告されており、介入が終わった後もしばらく改善が続いたという結果もあります。

一方で、研究の質にはばらつきがあり、どの方法が最も効果的なのか、効果が何年も続くのかについては、まだ十分に分かっていません。

認知行動療法は、がんの再発を防ぐ治療ではありません。また、不安を感じなくなることを目指すものでもありません。再発への心配があっても、その不安に振り回されずに日常生活を送れるよう、対処方法を身につけるための心理療法です。

専門的な心のケアを受けたい場合は、主治医や看護師、がん相談支援センターに相談するところから始められます。

参考文献・公式情報

  1. Cognitive-behavioural therapy effectiveness for fear of cancer recurrence: systematic review and meta-analysis(系統的レビュー・メタ解析、2024年オンライン公開)
  2. Effectiveness of Cognitive Behavioral Therapy on Fear of Cancer Recurrence in Breast Cancer: A Systematic Review and Meta-analysis(系統的レビュー・メタ解析、2024年オンライン公開、2025年雑誌掲載)
  3. Effect of Psychological Intervention on Fear of Cancer Recurrence: A Systematic Review and Meta-Analysis(系統的レビュー・メタ解析、2019年)
  4. The efficacy of cognitive behavioral therapy for mental health and quality of life among individuals diagnosed with cancer: A systematic review and meta-analysis(系統的レビュー・メタ解析、2024年)
  5. Guided versus non-guided digital psychological interventions for cancer patients: A systematic review and meta-analysis of engagement and efficacy(系統的レビュー・メタ解析、2024年)
  6. 専門家による心のケア|国立がん研究センター がん情報サービス
  7. 「がん相談支援センター」とは|国立がん研究センター がん情報サービス

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