手術後すぐに「動きましょう」と言われると、傷が開きそうで不安になるかもしれません。手術後早い段階から体を動かすのは急かすためではなく、寝たままでいることで起こりやすい問題を減らし、回復を助けるためです。
「動く」といっても、いきなり長時間運動するわけではありません。上半身を起こす、ベッドの端に座る、立ってみるなど、手術後の状態に合わせて少しずつ進めます。初めて起き上がるときは、スタッフに声をかけて一緒に始めましょう。
なぜ手術後は早めに動くの?
長く寝たままでいると、血の流れや呼吸、筋力などに影響が出ます。早めに少しずつ動くことが勧められる主な理由は、次のとおりです。
- 足に血のかたまりができるのを減らす:寝ていると足の血の流れがゆっくりになり、かたまり(血栓)ができやすくなります。足を動かしたり、状態に応じて立ったり歩いたりすることは、血栓予防の一助になります
- 肺の調子を保つ:座る・歩くと深く息がしやすくなり、たまった痰を出しやすくなるため、肺の問題を防ぐ助けになります。
- 筋力の低下を抑える:じっとしていると筋肉が弱くなり、日常に戻るのが大変になります。早めに体を動かすと回復がスムーズになることがあります。
- おなかの手術の場合:座ったり短く歩いたりすることで、腸の動きが戻りやすくなり、飲み物や食事を受け入れやすくなる場合があります。
いつ・どの程度動く? 最初はスタッフと確認
動き始める時期や、どの程度動いて良いかは、手術の内容やその日の体調によって変わります。初めて起き上がる・立つ・歩くときは、スタッフに確認し、必要な介助を受けながら進めます。
- ベッドの上で上半身を起こす
- ベッドの端に座り、ふらつかないか確かめる
- スタッフに付き添ってもらい、立つ・数歩歩く
点滴やドレーン、尿の管がついていても、スタッフが管の状態を確認したうえで動ける場合があります。自分で管を動かしたり外したりせず、歩くときの注意点を聞いておきましょう。その後、一人で動いてよい範囲についても、スタッフの指示に従ってください。。
痛みやめまいは、我慢せず伝えて
痛みやふらつきを我慢する必要はありません。伝え方が具体的だと、対応が決めやすくなります。以下は伝え方と、現場ですぐに頼める対応の例です。
- 伝え方の例:「傷が痛くて起き上がれません」「立つとめまいがします」のように、いつ・どんな症状が出るかを伝えます。胸の痛みや息苦しさが出た場合は動くのをやめ、すぐにスタッフへ知らせてください。
- 頼める対応の例:痛み止めの追加、いったん横になって休む、看護師の付き添いを続ける、他の姿勢を試すなど。
- 痛み止めについて:薬で痛みを和らげられることが多く、痛みが軽くなると体を動かしやすくなります。薬の種類やタイミングは医師の指示に沿って調整されますので、『薬で調整できますか?』と聞いてみてください。
付き添う人にできること、スタッフに任せること
本人が起き上がりたい、歩いてみたいと思ったとき、付き添う人だけで判断したり、体を支えて立たせたりする必要はありません。まずスタッフに声をかけましょう。
付き添う人にできるのは、本人の不安や痛みを聞くこと、通り道に置いた私物を片づけることなどです。体を支える手伝いは、スタッフから「ここを支えてください」と頼まれ、方法を教わった場合に限ります。点滴や管、医療機器には触れないでください。
本人が一人で動いてよい範囲は、回復に応じて変わることもあります。「トイレには一人で行っても大丈夫ですか?」など、具体的に確認しておくと付き添う人も迷わずに済みます。
キャンエビのまとめ
- 手術後早いから少しずつ体を動かすことは、血栓や肺合併症、筋力低下を減らし回復を助けるために勧められますが、開始時期や進め方は手術の種類や体の状態で変わります。
- 『ベッドで座る→立つ→短い歩行』のような段階を踏み、点滴や管があってもスタッフの確認と付き添いで安全に動ける場合が多いです。
- 痛みやめまいは我慢せず具体的に伝え、看護師や医師と一緒に動き方や薬で調整する選択肢を使ってください。
参考文献
- 〖SOMSに基づくプロトコルで進める早期離床〗外科術後離床の安全基準(資料種別要確認、2023-11-09)
- 術後の早期離床等に関するガイドライン(公的資料)
- Guidelines for perioperative care in elective abdominal and pelvic surgery at primary and secondary hospitals in low–middle-income countries (ERAS Society Recommendation)(診療ガイドライン、2022-04-27)
- Guidelines for Perioperative Care in Elective Colorectal Surgery: Enhanced Recovery After Surgery (ERAS) Society Recommendations (2018)(診療ガイドライン)
ご注意:病院ごとの手順は異なるため、実際の進め方は医療チームと相談してください。








