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治療後の運動は、生存率アップにも役立つ?

がん治療後の運動は、生存率アップにも役立つ?

がん治療後の運動というと、「落ちた体力を戻すため」「疲れにくい体をつくるため」というイメージが強いかもしれません。ところが2025年、運動が体力や生活の質だけでなく、がんの再発や生存にも関係する可能性を示した大規模な研究が発表されました。

注目されたのは、結腸がんの治療を終えた人を対象にした「CHALLENGE試験」です。これまでにも、よく体を動かす人ほどがんの再発や死亡が少ないという観察研究はありましたが、「もともと健康だから運動できるのでは?」という疑問が残っていました。CHALLENGE試験では参加者を無作為に2つのグループに分けることで、運動そのものの影響をより確かめやすい方法で調べています。

どんな研究だった?

参加したのは、手術と術後の抗がん剤治療を終えたステージIIIまたは再発リスクの高いステージIIの結腸がん患者889人です。445人は専門家の支援を受けながら運動するグループ、444人は健康や運動についての資料を受け取るグループに分けられました。

運動グループが行ったのは、決められた運動を全員が同じようにこなすプログラムではありません。運動の専門家による継続的な支援を受けながら、それぞれが有酸素運動の種類や頻度、強度などを選び、普段の運動量を増やしていくものでした。目標は最初の6か月で週10 MET時間以上増やし、その状態を3年間維持することでした。

運動したグループでは、再発などが少なかった

約8年間追跡した結果、運動グループでは、がんの再発、新しいがんの発生、死亡のいずれかが起きるまでの期間が長くなっていました。

5年後にこれらを経験せずにいた割合(無病生存率)は、運動グループで80.3%、比較グループで73.9%。差は6.4ポイントでした。

さらに、8年後に生存していた割合は、運動グループで90.3%、比較グループで83.2%でした。こちらは7.1ポイントの差です。

治療後の運動については以前から多くの研究がありましたが、今回の研究が注目されたのは、運動プログラムに参加するかどうかを無作為に割り付けた第III相試験で、再発だけでなく生存についても差がみられたことです。

「死亡リスク37%減」はどういう意味?

この研究は「運動で死亡リスクが37%低下した」と紹介されることもあります。

これは研究期間中の死亡の起こりやすさを比較した「ハザード比」が0.63だったことから出てくる数字です。「運動すると誰でも死亡する確率が37%下がる」「生存率が37%上がる」という意味ではありません。

実際の8年生存率を見ると90.3%と83.2%で、差は7.1ポイントです。「37%」だけを見るより、こちらも一緒に見ると研究結果の大きさをイメージしやすくなります。

どんな運動でも同じ効果がある?

ここはまだ分かりません。
CHALLENGE試験では、単に「運動してください」と伝えただけではなく、専門家が3年間にわたって継続的に支援しています。参加者は自分に合った有酸素運動を選びながら、運動量を増やしていました。

そのため、「毎日○分歩けば生存率が上がる」「週○回筋トレすれば同じ効果が得られる」と、この研究だけから決めることはできません。一方で、特別な競技や激しいトレーニングだけを行った研究でもありません。

すべてのがんに当てはまるわけではない

今回の研究結果が直接当てはまるのは、手術と術後抗がん剤治療を終えたステージIIIまたは高リスクのステージII結腸がん患者です。
乳がんや前立腺がんなど、ほかのがんでも運動と予後との関連を調べた研究は多数あります。しかし、CHALLENGE試験と同じ結果がすべてのがん種、病期、治療中の患者にも当てはまるとまでは言えません。

それでも今回の研究には大きな意味があります。これまで「運動する人の方が予後が良い」という研究では、健康状態や生活習慣など別の要因の影響を完全には除けませんでした。CHALLENGE試験によって、少なくとも対象となった結腸がん患者では、治療後の運動そのものが予後に影響する可能性をより強く示す結果が得られました。

運動は多ければ多いほどいい?

運動グループでは体力や身体機能も改善しましたが、筋肉や関節などに関する有害事象は比較グループより多く、18.5%対11.5%でした。ただし、運動グループで報告された筋骨格系の有害事象すべてが運動プログラムによって起きたわけではありません。

治療後は体力や手術後の状態も人によって違います。今回の研究も「とにかく激しく運動すればいい」という結果ではなく、専門家の支援を受けながら、それぞれに合わせて運動量を増やしていくプログラムでした。

運動は「体力を戻すため」だけではないかもしれない

がん治療後の運動には、体力や身体機能を改善するという比較的よく知られたメリットがあります。CHALLENGE試験はそこに、一部の結腸がん患者では再発や生存にも影響する可能性があるという、より直接的な証拠を加えました。

ただし、現時点で「運動すればどのがんでも長生きできる」と言えるわけではありません。どのがんで、どの時期に、どの程度の運動をすると予後に影響するのかは、まだ研究が続いているところです。

キャンエビのまとめ

  • 2025年のCHALLENGE試験では、治療後の結腸がん患者889人を対象に、3年間の運動プログラムの効果が調べられました。
  • 5年無病生存率は80.3%対73.9%、8年全生存率は90.3%対83.2%で、運動グループの方が良好でした。
  • 「死亡リスク37%減」は相対的な指標で、「生存率が37%上がった」という意味ではありません。
  • 今回の結果をすべてのがんや治療中の患者にそのまま当てはめることはできません。
  • 運動グループでは筋骨格系の有害事象もやや多く、「激しい運動ほど効果が高い」という研究ではありません。

治療後の運動は、体力を取り戻すためだけのものではないかもしれません。少なくとも一部の結腸がんでは、再発やその後の生存にも関係することを、これまでより強い方法で示した研究が出てきています。

参考文献

  1. Structured Exercise after Adjuvant Chemotherapy for Colon Cancer(無作為化比較試験、2025-06-02)
  2. Structured Exercise after Adjuvant Chemotherapy for Colon Cancer – PubMed(無作為化比較試験、2025-06-02)
  3. Effects of a structured exercise program on motivational outcomes in patients with colon cancer(コホート研究)
  4. A randomized phase III trial of the impact of a structured exercise program on disease-free survival (DFS) in stage 3 or high-risk stage 2 colon cancer: Canadian Cancer Trials Group (CCTG) CO.21 (CHALLENGE) — ASCO abstract(学会抄録)
  5. Exercise Guidelines for Cancer Survivors: Consensus statement from International Multidisciplinary Roundtable(専門家合意文書、2019-11-01)

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