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がんは「生活習慣病」? 生活習慣、加齢、感染、遺伝をたどって考える

がんは「生活習慣病」? 生活習慣、加齢、感染、遺伝をたどって考える

日本では、がんは「生活習慣病」に含まれています。ただし、これは「生活習慣が悪かったから、がんになった」という意味ではありません。

2026年に発表された世界185か国・36種類のがんを対象とした解析では、2022年に新たに診断されたがんの約37.8%が、30の「変えられる要因」に関連すると推定されました。ここには喫煙や飲酒、体重、運動だけでなく、感染、職業上の曝露、大気汚染、紫外線なども含まれています。

一方で、がんには加齢、感染、遺伝、環境・職業上の曝露など、さまざまな要因が関わります。「がん=生活習慣が原因」と考えるのは正確ではありません。

そもそも「生活習慣病」ってどういう意味?

喫煙や飲酒、体重、食事、運動は自分で変えられる可能性があり、予防の話をするときに分かりやすい切り口です。実際、世界規模の解析では、こうした変えられる要因ががんの一定の割合に関わると示されています。

そのため、「生活習慣を整えればがんのリスクを下げられる」という話は、一部は事実に基づいています。ただ、この言葉が広がるうちに、「がんになった人は生活が悪かった」という個人への責めに傾きやすい面があります。以下では、その根拠がどこまで言えるのかを順にたどります。

世界のがんの約4割は「予防可能」なの?

2022年のがんを対象にした国際的な解析では、新規がんの約37.8%が30の変えられる要因に結びつけられました。2021年の世界的な負担の解析でも、がんによる死亡の約41%が評価対象の危険因子に関係すると推定され、最も大きいのは喫煙でした。ただし、この30要因には、喫煙や飲酒、体重、運動だけでなく、感染、職業上の曝露、大気汚染、紫外線なども含まれています。「がんの約4割が生活習慣による」という意味ではありません。

一方で、この数字は「集団の中でその要因がなければ減らせたかもしれない割合」という推定です。国際がん研究機関(IARC)の資料も、こうした寄与割合の推定には、入力するデータの質や解釈の難しさがあると説明しています。解析に含まれた要因の範囲、曝露データの質、地域差によっても値は変わります。

特に大切なのは、この割合から個々の患者さんのがんを特定の要因だけの「せい」だと断定することはできないという点です。解析を行った研究者自身も、個々の症例を一つの要因に原因として結びつけることはできないという限界を示しています。また、数字は日本に限ったものではなく、男性と女性、地域によっても差があります。

年齢を重ねること自体が、がんのリスクを高める

がんは、年齢とともに発症する人が増える病気です。年を重ねると、細胞の遺伝子の変化が少しずつ積み重なり、体の組織の環境も変わっていくことが、その背景として説明されています。

年齢は自分で変えられるものではありません。生活習慣に気をつけていた人でも、がんになることはあります。ただし、この説明は主に総説による生物学的な整理で、個々の患者さんの発症の理由までを示すものではありません。

感染によるがんは、予防の方法も別にある

ピロリ菌、ヒトパピローマウイルス(HPV)、B型・C型肝炎ウイルスなどの感染は、胃がん、子宮頸がん、肝がんなどの主要な原因として知られています。IARCの報告では、2018年に世界のがんの約13%が感染に関連すると推定されました。ただし、地域によって差が大きいとされています。

感染は、喫煙や飲酒とは性質の異なるがんの原因の一つです。WHOは、ワクチンやたばこ対策、検診などの公衆衛生の取り組みが予防に役立つとしています。感染が関わるがんの場合、個人の暮らし方を責める理由にはなりません。

ご自身や家族の感染の有無、ワクチンや検査について気になることがあれば、主治医や自治体の窓口に相談してみてください。日本での具体的な対応は、今回の資料では確認できていません。

遺伝、環境、職業の曝露はどう位置づけられるか

遺伝性のがんや遺伝的な体質は、その方にとっては大きな意味を持つことがあります。ただ、人口全体のがんに占める割合は一般に限られるとされています。

アスベストなどの職業・環境での曝露や放射線も、特定のがんの原因に関わるとされています。WHOの資料も、環境・職業曝露をがんの要因のひとつとして挙げています。こうした要因は、本人の選択だけでは避けにくいことがあります。物質ごとの詳しい評価や日本での曝露の状況は、今回の資料では確認できていません。

ここまでの整理から、がんは生活習慣、年齢、感染、遺伝、環境などが重なって起こることが分かります。

キャンエビのまとめ

  • 日本では、がんは「生活習慣病」に含まれている
  • 喫煙や飲酒、体重、運動などは、一部のがんのリスクに関係する
  • 世界の新規がんの約38%が「変えられる要因」に関連すると推定されているが、感染や職業曝露なども含まれる
  • がんには、加齢、感染、遺伝、環境などさまざまな要因が関わる
  • 集団のリスクについての統計から、個人がなぜがんになったのかを特定することはできない

生活習慣を見直すことは、がんの予防という点で意味があります。一方、それは「がんになった人の生活習慣に問題があった」ということではありません。集団としてのリスクを下げる話と、一人の患者さんがなぜがんになったのかという話は、分けて考える必要があります。

参考文献

  1. Global and regional cancer burden attributable to modifiable risk factors to inform prevention(グローバル解析)
  2. Global burden of cancer and associated risk factors in 204 countries and territories, 1980–2021: a systematic analysis for the GBD 2021(世界の疾病負担に関する体系的解析、2024-03-13)
  3. Global burden of cancer attributable to infections in 2018: a review and update(公的資料、2022-06)
  4. Cancer(公的資料、2026-07-20)
  5. Population Attributable and Preventable Fractions: Cancer Risk Factor Surveillance, and Cancer Policy Projection(公的資料)
  6. Cancer as a disease of old age: changing mutational and microenvironmental landscapes(レビュー論文、2020-01-14)
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