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同じ抗がん剤なのに、元気な人とつらい人がいるのはなぜ?

同じ抗がん剤なのに、元気な人とつらい人がいるのはなぜ?

外来の点滴室(いわゆる「ケモ室」)で、隣の人は点滴が終わったらスタスタ歩いて帰っていく。それなのに自分はぐったり。

「同じような治療をしているのに、なんで私だけこんなにつらいんだろう」「私の体が弱いのかな」と思ってしまうことがあるかもしれません。

でも、同じ抗がん剤を使っていても、副作用の出方や強さは人によって違います。 つらいから体が弱いわけでも、元気そうに見える人が特別に強いわけでもありません。

同じ抗がん剤でも、副作用は同じにならない

抗がん剤の副作用には大きな個人差があります。

年齢や体格、肝臓や腎臓の働き、持病、これまでに受けた治療、併用している薬など、さまざまな条件が影響します。同じ薬を同じように使っていても、体の中での薬の動き方や、薬に対する体の反応までまったく同じになるわけではありません。

そのため、ある人は吐き気が強く、別の人はほとんど感じない。ある人は強いだるさが出る一方で、別の人は比較的普段どおり過ごせる、といった違いが起こります。

副作用の個人差は、珍しいことではありません。

体の中で薬が処理される速さも人それぞれ

抗がん剤は、体に入ったあと肝臓などで代謝されたり、腎臓などから排泄されたりします。この「薬を処理する仕組み」にも個人差があります。

肝臓や腎臓の機能によっては薬やその代謝物が体内に残りやすくなることがあり、薬によっては検査値を確認しながら投与量を調整します。また、ほかに使っている薬やサプリメントなどが抗がん剤の働きに影響することもあります。

だからこそ、抗がん剤の量は単純に「みんな同じ量」ではなく、薬の種類や体格、臓器の状態などを考慮して決められています。

それでも、副作用の出方を完全に予測することはできません。

生まれつきの体質が影響することもある

薬を分解する酵素などには、生まれつきの個人差があります。それによって、特定の抗がん剤で副作用が強く出やすい人がいることも分かっています。

よく知られている例が、抗がん剤のイリノテカンと「UGT1A1」という酵素です。UGT1A1の働きが弱くなる遺伝的なタイプを持つ人では、イリノテカンによる重い好中球減少などの副作用が起こるリスクが高くなることがあります。

すべての抗がん剤で遺伝子検査をするわけではありませんが、これは「同じ薬を使っても、体の反応は人によって違う」ことが実際に確認されている例の一つです。

副作用の違いは、「気合い」や「我慢強さ」だけで説明できるものではありません。

隣の人が元気そうでも、本当にずっと元気とは限らない

もう一つ忘れやすいのが、副作用が出るタイミングです。

点滴中や直後に出る症状もあれば、翌日以降に出てくる症状もあります。数日たってから強くなるものや、治療を何回か続けるうちに目立ってくる副作用もあります。

点滴室で元気そうに見えた人が、翌日は一日寝ているかもしれません。逆に、本当に副作用が軽く、普段どおり生活できている人もいます。

どちらもあり得ます。

つまり、病院でたまたま見えた数時間だけでは、その人の治療生活全体は分かりません。

「隣の人は元気なのに」と比べても、実は比較するための条件そのものがそろっていないのです。

「副作用が強い=抗がん剤が効いている」ではない

ここでもう一つ、よくある疑問があります。

「こんなにつらいんだから、その分がんにも効いているのでは?」

反対に、副作用がほとんどないと「薬が効いていないのでは?」と心配になる人もいます。

しかし、副作用が強いから抗がん剤がよく効いているとは限りません。逆に、副作用が軽いから効いていないとも限りません。

特定の薬や副作用について治療効果との関連が研究されている例はありますが、それをすべての抗がん剤に当てはめることはできません。

抗がん剤が効いているかどうかは、副作用の強さではなく、画像検査や診察、血液検査など、そのがんや治療に応じた方法で評価します。

「副作用がないから、もっと薬を増やした方がいいのかな」「つらいけれど、効いている証拠だから我慢しよう」と自分で判断する必要はありません。

副作用は「我慢比べ」ではない

抗がん剤治療を続けていると、つい周囲の患者さんと比べてしまうことがあります。

「あの人は普通に歩いている」
「私はすぐ横になってしまう」
「みんなこれくらい我慢しているのかもしれない」

でも、抗がん剤治療は、誰が一番元気に耐えられるかを競うものではありません。

つらい症状を医師や看護師、薬剤師に伝えることは「弱音」でもありません。症状によっては吐き気止めなどの支持療法を調整したり、治療スケジュールや投与量を検討したりできる場合があります。

「これくらいで言っていいのかな」と迷ったら、まず伝えて大丈夫です。

たとえば「点滴の翌日から3日くらい、ほとんど起きていられません」「吐き気止めを飲んでも食事がとれません」のように、いつから・どのくらい・生活にどんな影響があるかを伝えると、医療者にも状況が伝わりやすくなります。

隣の人と比べなくて大丈夫

同じ抗がん剤を使っていても、体の中での薬の動き方も、副作用の種類も、症状が出るタイミングも一人ひとり違います。

点滴室で隣の人が元気そうに帰っていっても、その人と自分を比べる必要はありません。

つらいのは「自分が弱いから」ではありません。そして、副作用が軽いのは「薬が効いていないから」でもありません。

自分に出ている症状は、自分の治療に必要な情報です。「ほかの人は大丈夫そうだから」と我慢せず、医療チームに伝えていきましょう。

キャンエビのまとめ

  • 同じ抗がん剤でも、副作用の種類や強さには個人差があります。
  • 年齢、臓器機能、これまでの治療、併用薬、薬を代謝する仕組みなど、さまざまな要因が影響します。
  • 遺伝的な体質によって、特定の抗がん剤の副作用が起こりやすくなることもあります。
  • 副作用が出るタイミングも人それぞれなので、病院で元気そうに見える人がいつも元気とは限りません。
  • 「副作用が強い=よく効いている」「副作用が軽い=効いていない」と判断することはできません。
  • 副作用は我慢比べではありません。つらい症状は遠慮せず、医師・看護師・薬剤師に伝えて大丈夫です。

同じ薬でも、体の反応は一人ひとり違います。隣の人ではなく、「自分の体がどう反応しているか」を医療チームと一緒に見ていくことが大切です。

参考文献

  1. National Cancer Institute. Side Effects of Cancer Treatment
  2. National Cancer Institute. Chemotherapy to Treat Cancer
  3. Hulshof EC, et al. Dutch Pharmacogenetics Working Group (DPWG) guideline for the gene–drug interaction between UGT1A1 and irinotecan. European Journal of Human Genetics. 2023.
  4. de Man FM, et al. Individualization of Irinotecan Treatment: A Review of Pharmacokinetics, Pharmacodynamics, and Pharmacogenetics. Clinical Pharmacokinetics. 2018.

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