がんの治療方針を決めるには、「がんかどうか」だけでなく、がんの種類や性質、体のどこまで広がっているか、治療を受ける体の状態などを確認する必要があります。
病理検査、画像検査、バイオマーカー検査、血液検査などは、それぞれ調べる目的が異なります。すべての患者さんが同じ検査を受けるわけではなく、がんの種類や予定している治療に応じて必要な検査が選ばれます。国立がん研究センターも、治療方針を検討するための広がりの検査と、治療を受けられる状態かを判断するための全身状態の評価を説明しています。
今回の検証で分かったこと
治療方針を決める前の検査には、それぞれ異なる役割があります。病理検査はがんの種類や性質、画像検査は病変の位置や広がり、血液検査などは体の状態を確認するために行われます。
がんの種類によっては、バイオマーカー検査の結果が、使用する薬を選ぶ判断材料になることもあります。コンパニオン診断は、特定の薬の有効性や安全性が期待できる患者さんを特定するための検査です。
必要な検査は、がんの種類や病期、予定している治療によって異なります。検査が追加されたからといって、必ずしも病状が悪化したことを意味するわけではありません。
検査には、それぞれ異なる役割があります
診断後に複数の検査が行われるのは、単に「がんかどうか」を見るだけでは治療を安全に決められないからです。主に四つの役割があります。
検査の種類や順番は、がんの種類や予定する治療、患者さんの全身状態によって変わります。全員が同じ検査を受けるわけではありません。
- 病理:組織型や分化度を確定し、治療の地図作りに役立てる
- 画像(CT/MRI/PET等):治療範囲やステージを決めるために、どこにどれだけ広がっているかを評価する
- バイオマーカー(遺伝子・PD‑L1等):特定の薬が適応かどうかの判断材料となる場合がある
- 血液・心肺検査:手術や薬物療法に体が耐えられるかを確認する
ここが要点
検査は治療を始めるための準備であり、必要な検査は個別に決まります。
病理検査で、がんの種類や性質を調べます
生検や手術で採取した標本を顕微鏡で診断する病理検査は、がんであるかどうかだけでなく組織型や分化度を確定します。免疫染色や分子検査が追加されることで、より詳しい性質や治療標的が分かることがあります。
標本の量や品質が不十分だと追加検査や再切片、場合によっては再生検が必要になることがあり、外部専門家による再診が入ることもあります。そのため結果が出るまで時間がかかる場合があります。
- 顕微鏡診断で組織型・分化度を確認することが治療選択の基礎になります
- 免疫染色や分子検査によって治療標的が判明することがある
- 標本の品質問題で追加の処理や再検査が必要になる場合がある
画像検査で、がんの位置や広がりを調べます
CT、MRI、PET、超音波検査などの画像検査は、病変の位置や大きさ、広がりを調べるために使われます。それぞれ得意な部位や分かることが異なるため、がんの種類や調べる目的に応じて検査が選ばれます。
一つの画像検査だけでは判断しにくい場合には、別の検査を組み合わせたり、時間を置いて変化を確認したりすることもあります。これらを組み合わせて、ステージや手術・放射線の範囲を決めます。
小さな病変や機能的情報は見えにくいことがあり、必要に応じて追加検査や経過観察で補うことがあります。
- CT:肺転移や腹部臓器の評価に適している
- MRI:脳・脊髄や軟部組織の詳細評価に適する
- PET:全身の代謝像で見逃しやすい転移を探す補助になる
バイオマーカー検査が薬を選ぶ材料になることもあります
遺伝子の変化や、がん細胞に現れる特定のたんぱく質などを調べるバイオマーカー検査は、薬を使用できるか、効果を期待できる可能性があるかを判断する材料になります。
がんゲノムプロファイリング(NGS)は複数の遺伝子を同時に調べ、標的治療の可能性を検討する手段です。ただし、すべての患者がNGSを受けるわけではなく、適応は病型や治療方針によって決まります。
- コンパニオン診断は薬の適応判定の重要な情報源になる
- NGSは多くの遺伝子を同時に評価して治療候補を探す手段になる
- バイオマーカーの結果は治療選択に影響することがあるが、必ずしも全員の治療が変わるわけではない
血液検査などで、治療を受ける体の状態を確認します
血液検査では、血球の数や肝臓・腎臓の働きなどを確認します。予定する治療に応じて、心電図、心エコー、呼吸機能検査などが追加されることもあります。心電図や心エコー、呼吸機能検査は心肺機能を評価し、術式や全身療法の適応を判断する材料になります。
検査結果によっては追加の内科的治療やリハビリテーション、場合によっては治療の延期が検討されることがあり、このことが治療開始時期に影響する場合があります。
- 血液検査で出血や感染、肝腎機能のリスクを評価する
- 心電図・心エコーで心機能を確認し、術後合併症のリスクを減らす
- 呼吸機能検査は麻酔や術後管理の参考になる
検査が追加されることもあります
最初の検査だけでは判断に必要な情報がそろわず、別の検査が追加されることがあります。
たとえば、採取した組織の量が少なかった場合、画像だけでは病変の性質を判断しにくい場合、治療に関係するバイオマーカーをさらに調べる場合などです。
追加検査が行われる理由はさまざまであり、検査が増えたことだけで、病状が悪化したとは判断できません。理由が分からないときは、「この検査では何を確認するのですか」と尋ねることができます。
検査について確認したいときの質問例
検査待ちの不安を和らげるために、次の四つの質問を目安にしてみてください。明確な答えが得られないときは、書面や再説明を求めることも遠慮なく行ってください。
- この検査で具体的に何が分かるのか?
- 結果はいつごろ出るのか?(目安の日時・連絡方法)
- 結果次第で治療開始はいつ頃になるか?代替案はあるか?
- 待つことで想定されるリスクや、急いだ場合のデメリットは何か?
キャンエビのまとめ
- 治療方針を決めるには、がんの種類や性質、広がり、治療を受ける体の状態など、複数の情報が必要です。
- 病理検査、画像検査、バイオマーカー検査、血液検査などには、それぞれ異なる役割があります。
- 必要な検査は、がんの種類や病期、予定する治療によって異なり、全員が同じ検査を受けるわけではありません。
- 検査が追加されたからといって、必ずしも病状が悪化したという意味ではありません。目的が分からない場合は、「この検査で何を確認するのか」と尋ねることができます。
参考文献
- Companion Diagnostics(公的資料)
- Updated 9/19/2024 — PMDA review report: Analytical comparability and performance sections for companion diagnostic (example; F1CDx System)(公的資料、2024-09-19)
- Practical guidelines on the handling of pathological tissue samples for cancer genomic medicine(診療ガイドライン、2021-07-30)
- Clinical practice guidance for next-generation sequencing in cancer diagnosis and treatment (edition 2.1)(診療ガイドライン、2020-11-25)
- JCS 2022 Guideline on Perioperative Cardiovascular Assessment and Management for Non-Cardiac Surgery(診療ガイドライン)
- Diagnostic Imaging Guidelines 2021 (Diagnostic Imaging Guidelines Committee, Japan Radiological Society)(診療ガイドライン)
ご注意
この記事では、がんの治療方針を決める前に行われる主な検査を一般的に説明しています。実際に必要な検査は、がんの種類や病状、予定する治療によって異なります。検査の目的や結果については、受診先の医療者にご確認ください。






