「肉はがんの餌になる」「がんになったら肉をやめた方がいい」と聞くことがあります。
しかし、肉を食べることで、すでにあるがんが直接大きくなったり、進行したりすると証明されているわけではありません。
赤肉や加工肉についてよく知られているのは、長期間にわたって多く食べることと、主に大腸がんの「発症リスク」との関係です。がんと診断された後に肉を食べることと、進行や再発との関係は、分けて考える必要があります。
「がんの発症」と「診断後の進行」は別の話
肉とがんの関係を考えるとき、まず区別したいのが次の2つです。
- がんではない人が、将来がんを発症するリスク
- すでにがんと診断された人の、進行や再発への影響
赤肉・加工肉について比較的多く研究されているのは、前者の「がんの発症リスク」です。
一方、肉を食べることで、すでにあるがんが進行するかどうかについては、十分な根拠がありません。大腸がんと診断された人を対象に、診断後の赤肉・加工肉の摂取量を調べた研究もありますが、再発や死亡リスクとの明確な関連は確認されませんでした。
ただし、これは「いくら食べても影響がない」と証明したものではありません。診断後の食事を調べた研究はまだ限られており、食事以外の生活習慣による影響も完全には除けないためです。
赤肉と加工肉は同じものではありません
赤肉とは、牛肉・豚肉・羊肉など、哺乳類の肉を指します。鶏肉や魚は含まれません。
加工肉には、ハム、ソーセージ、ベーコンなどがあります。ただし、使われる添加物や塩分、燻煙の有無など、原材料や製法には大きな違いがあります。こうした違いによって影響が変わる可能性はありますが、現在の研究では、個々の商品について「これは安全」「これは危険」と判断できるところまでは分かっていません。添加物が少ない商品もありますが、「無添加なら大腸がんの発症リスクがない」と確認されているわけではありません。
世界保健機関(WHO)の専門機関である国際がん研究機関(IARC)は、加工肉を「人に対して発がん性がある」、赤身肉を「おそらく発がん性がある」と分類しています。これは主に、大腸がんの発症に関する研究をもとにした評価です。
ただし、この分類は「発がん性があるか」を評価するもので、危険の大きさをそのまま表すものではありません。加工肉がたばこと同じ分類だからといって、同じ程度の危険があるという意味でもありません。
日本人は肉をどのくらい控えるべき?
国立がん研究センターは、日本人の赤肉・加工肉の摂取量は世界的に見ると少なく、平均的な範囲で食べている場合、大腸がんリスクへの影響はほとんど考えにくいと説明しています。一方、摂取量が多い場合には、リスクを高める可能性があります。
そのため、「肉を完全にやめる」と考えるよりも、長期的には次のような食べ方が現実的です。
- ハム、ソーセージ、ベーコンなどの加工肉を日常的に多く食べ続けない
- 肉だけでなく、魚、卵、豆腐、納豆なども取り入れる
- 野菜や果物、豆類、全粒穀物なども組み合わせる
- 赤肉を毎日大量に食べ続けない
肉を食べた後一回一回に不安を感じる必要はありません。大切なのは、長期的な食事全体の組み合わせです。
治療中は、肉をやめることより栄養を保つことが大切
治療中は、食欲低下や吐き気、味覚の変化などによって、食べられる量が減ることがあります。
肉は、たんぱく質のほか、鉄、亜鉛、ビタミンB群などを含む食品です。治療中は、食べられる量が減り、エネルギーやたんぱく質が不足することもあります。肉はたんぱく質を取るための選択肢の一つなので、がんと診断されたことだけを理由に避ける必要はありません。
国立がん研究センターのがん情報サービスも、治療中は体力の維持や感染予防のために、エネルギーやたんぱく質などが不足しないようにすることが大切だとしています。特別な食事の指示がない場合は、体調に合わせて、食べられるものから食べることが基本です。
肉が食べにくい日は、次のような食品でもたんぱく質を取れます。
- 魚
- 卵
- 豆腐や納豆などの大豆製品
- 牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品
反対に、肉料理が食べやすい日なら、無理に別の食品へ置き換える必要はありません。
「肉をやめれば治る」という食事療法には注意
肉を完全にやめることが、がんの治療になると確認されたわけではありません。
特定の食品を極端に避ける食事療法は、食べられるものを減らし、必要なエネルギーやたんぱく質まで不足させることがあります。国立がん研究センターも、特定の食品を極端に制限することで体に悪い影響が出たり、治療を続けにくくなったりする可能性があると注意を促しています。
手術後の食事、腎機能の低下、飲み込みにくさなどがあり、病院から個別の指示を受けている場合は、その指示を優先してください。
キャンエビのまとめ
- 肉を食べることで、すでにあるがんが直接進行すると証明されているわけではありません。
- 赤肉や加工肉と大腸がんの発症リスクには、食べる量や頻度が関係します。加工肉は製法や原材料に違いがありますが、商品ごとのリスクまでは明らかになっていません。
- 長期的には加工肉や赤肉に偏らず、魚・卵・大豆製品なども組み合わせるのが現実的です。
- 治療中に食べられる量が減っているときは、一律に肉をやめるより、まずエネルギーとたんぱく質を確保することを優先します。
- 「肉をやめればがんが治る」という根拠はありません。極端な食事制限は避けましょう。
参考文献
- 赤肉・加工肉のがんリスクについて|国立がん研究センター
- 赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて|国立がん研究センター
- IARC Monographs evaluate consumption of red meat and processed meat|IARC
- Limit red and processed meat|World Cancer Research Fund
- Pre- and post-diagnostic meat intake in relation to risk of recurrence and mortality among individuals with stage I–III colorectal cancer
- がんと食事|国立がん研究センター がん情報サービス
- がんと民間療法―健康食品・サプリメント・食事療法を中心に|国立がん研究センター がん情報サービス








