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マルチビタミンを飲めば栄養不足は防げる?

マルチビタミンを飲めば栄養不足は防げる?

治療中に食欲が落ちたり、食べられるものが少なくなったりすると、「とりあえずマルチビタミンを飲んでおけば、栄養不足を補えるかな」と考えることがあるかもしれません。
マルチビタミンは、食事から十分に摂れない一部のビタミンやミネラルを補うことはできます。ただし、食事量が減ったときに問題になる栄養不足を、マルチビタミンだけで防げるわけではありません。
ポイントは、「ビタミン不足」と「低栄養」は同じではないことです。

マルチビタミンで補えるのは栄養の一部分

マルチビタミン・ミネラルの製品には、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、葉酸、亜鉛など、複数のビタミンやミネラルが含まれています。製品によって成分や含有量はかなり異なりますが、こうした微量栄養素を補うことが主な役割です。

一方、マルチビタミンには、食事から摂るエネルギー(カロリー)やたんぱく質、脂質などはほとんど含まれていません。
たとえば治療の影響で食事量が普段の半分になったとき、マルチビタミンを飲んでも、食べられなかったご飯や肉、魚、卵などから摂るはずだったエネルギーやたんぱく質の代わりにはなりません。
「ビタミンを飲んでいるから栄養は足りている」とは限らないのです。

がん治療中に気をつけたい「低栄養」とは?

がん治療中は、吐き気、食欲低下、味覚の変化、口内炎、飲み込みにくさなど、さまざまな理由で食事量が減ることがあります。また、がんそのものや治療の影響によって、体重や筋肉が減っていくこともあります。
こうしたときに問題になるのが低栄養です。

低栄養は、単に「ビタミンが足りない」という状態ではありません。必要なエネルギーやたんぱく質などを十分に摂れず、体重や筋肉量が減ったり、体の機能に影響が出たりすることも含まれます。
医療現場では、体重の変化、BMI、食事量、筋肉量、体の状態などを組み合わせて栄養状態を評価します。必要に応じて血液検査なども参考にしますが、ひとつの検査値だけで栄養状態が決まるわけではありません。

食事が減っているなら、マルチビタミンだけでは足りない

「最近あまり食べられないから、マルチビタミンを飲もう」という考え方で特に気をつけたいのがここです。
食事量が大きく減っている場合、まず不足しやすいのは食事そのものから得ていたエネルギーやたんぱく質です。マルチビタミンを追加しても、この不足を埋めることはできません。

そのため、食事量や体重が減っている場合には、「どのビタミンを摂るか」だけでなく、食事全体でどのくらい食べられているかを見ることが重要になります。
食べられる量が少ないときには、少量でもエネルギーやたんぱく質を摂りやすい食品を選んだり、必要に応じて経口栄養補助食品(ONS)を利用したりする方法もあります。

特定のビタミンやミネラルを補った方がいいこともある?

一方で、ビタミンやミネラルをサプリメントで補うこと自体が意味のないものというわけでもありません。
食事内容や病気、治療などによって特定の栄養素が不足している場合には、その栄養素を補うことが検討されます。この場合は、「なんとなく栄養が足りなさそうだからマルチビタミンを飲む」というより、必要な栄養素を必要な量だけ補うという考え方になります。

ESPEN(欧州臨床栄養代謝学会)のがん患者の栄養に関するガイドラインでは、ビタミンやミネラルはおおむね推奨される量を確保し、特定の欠乏がない場合に高用量の微量栄養素を使用することは勧めていません。
つまり、治療中だからビタミンをたくさん摂れば摂るほどよい、というわけではありません。

がん治療中のサプリメントは「多いほど安心」ではない

市販のマルチビタミンには、1日に必要とされる量に近い成分を含むものもあれば、一部の成分をかなり高用量で配合した製品もあります。
がん治療中は、サプリメントの成分や量によって、治療薬との相互作用が問題になることがあります。NCI(米国国立がん研究所)も、食品やサプリメントが一部のがん治療薬の働きに影響する可能性について情報を提供しています。

また、ビタミンCやビタミンEなどの抗酸化サプリメントとがん治療との関係についても研究されていますが、治療中の使用による影響については、まだはっきりしていない部分があります。

ただし、これは「治療中はマルチビタミンを飲んではいけない」という意味ではありません。一般的な摂取量のマルチビタミンと、特定のビタミンや成分を通常よりはるかに多く摂る高用量サプリメントでは、治療への影響や過剰摂取のリスクも異なります。
大切なのは、「サプリだから安全」「ビタミンだから多いほど体にいい」と考えないことです。

食事量や体重が減っているなら、食事全体を見る

治療中に食事量が減っていたり、体重が続けて減っていたりする場合は、マルチビタミンだけで補おうとするより、まず食事全体を見る必要があります。
「以前の何割くらい食べられているか」「体重がどのくらい変化しているか」「食べにくい原因は何か」が分かると、必要な対策も変わってきます。

食べにくさに合わせて食品を変える、少量で栄養を摂りやすいものを選ぶ、経口栄養補助食品を使う、特定の栄養素が不足していれば個別に補うなど、方法は一つではありません。
すでにマルチビタミンやほかのサプリメントを使っている場合は、商品名や成分、摂取量が分かるパッケージや写真を主治医や薬剤師に見せると、治療薬との相互作用も確認しやすくなります。

キャンエビのまとめ

  • マルチビタミンで補えるのは、主にビタミンやミネラルなどの微量栄養素です。
  • エネルギーやたんぱく質、脂質など、食事量が減ったときに不足する栄養のすべてを補えるわけではありません。
  • 「ビタミン不足」と「低栄養」は同じではありません。
  • 特定の栄養素が不足している場合には、その栄養素を個別に補うことがあります。
  • ビタミンやミネラルも、多く摂れば摂るほどよいわけではありません。
  • がん治療中のサプリメントは、成分や量によって治療薬との相互作用が問題になることがあります。
  • 食事量や体重が減っている場合は、マルチビタミンだけで考えず、食事全体でどのくらい栄養を摂れているかを見ることが大切です。

マルチビタミンは、足りない栄養素を補う選択肢のひとつです。でも、食事そのものの代わりにはなりません。

特に治療中に食べられる量が減っているときは、「ビタミンを摂れているか」だけでなく、エネルギーやたんぱく質を含めて、体に必要な栄養を全体として摂れているかを考えることが大切です。

参考文献

  1. ESPEN practical guideline: Clinical nutrition in cancer(診療ガイドライン、2017-02-01)
  2. Cancer Therapy Interactions With Foods and Dietary Supplements (PDQ) – Patient Version(公的な患者向け情報、2024-06-12)
  3. Dietary Supplements: What You Need to Know (FDA consumer guidance) / Mixing Medications and Dietary Supplements Can Endanger Your Health(公的資料、2025-03-15)
  4. Dietary Supplements (American Cancer Society patient guidance / brochure)(公的な患者向け情報、2024-01-10)
  5. マルチビタミン/ミネラル (MVM) サプリメント(eJIM/厚生労働省 翻訳ページ)(医療者監修サイト)
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