結論から言うと、はい。森林浴の後に、NK(ナチュラルキラー)細胞の活性などが上昇したことを示すヒト研究があります。
ただし、ここでいうのは「免疫機能の一部に変化が観察された」という意味です。「免疫力全体が上がる」「がんが縮小する」という意味ではありません。
では、森林浴について実際にどんなことが研究されているのでしょうか。
森林浴の後、NK細胞に変化がみられた研究結果がある
森林浴と免疫機能については、日本を含め複数の研究が行われています。
よく引用される日本の研究では、健康な中年男性12人が2泊3日の森林浴旅行を行い、森林を歩いた後にNK細胞の活性が上昇しました。さらに、パーフォリン、グランザイム、グラニュリシンといった、NK細胞が標的となる細胞を攻撃するときに関係するタンパク質にも変化が報告されています。
別の研究でも森林環境で過ごした後のNK細胞活性などが調べられており、2024年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析でも、フィトンチッドへの曝露とNK細胞活性の上昇との関連が報告されています。
一部の研究では数週間後までNK細胞活性の変化が観察されていますが、研究規模は小さく、どの程度の時間続くのかはまだ十分に分かっていません。
つまり現時点では、「森林浴の後、一部の免疫指標が変化することを示す研究はある」と考えるのがよさそうです。
「NK細胞が活性化する」=「がんに効く」ではない
ここは大切なポイントです。
NK細胞は、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞などを認識して攻撃する免疫細胞の一つです。そのため「NK細胞が活性化するなら、森林浴でがんを治せるのでは?」と思うかもしれません。
しかし、血液検査などで免疫指標に変化がみられることと、実際にがんが縮小したり、再発が減ったり、生存期間が延びたりすることは別です。
森林浴によって、がんが縮小する、再発を防ぐ、生存期間を延ばす、といった効果が確認されたわけではありません。
そのため、森林浴をがん治療の代わりとして考えることはできません。
なぜ森林浴で変化するの?
森林浴による変化の理由として研究されているものの一つが、樹木が放出する揮発性物質「フィトンチッド」です。
フィトンチッドへの曝露が免疫機能に影響する可能性を調べた研究がありますが、森林浴にはそれ以外の要素もたくさんあります。
森の中を歩く、自然を見る、静かな場所で休む、普段の生活環境から離れる、ストレスが和らぐ――こうした複数の要因が同時に起こります。
そのため、現在の研究から「森林浴の効果はすべてフィトンチッドのおかげ」と断定することはできません。
免疫だけじゃない。森林浴とQOL
森林浴について研究されているのは免疫機能だけではありません。
自然環境で過ごすことと、ストレスや気分などの心理面との関係を調べた研究も多く、システマティックレビューでは、森林浴による心理的な改善を示した研究が報告されています。
研究方法や参加者、森林で過ごす時間などにはばらつきがあるため、「森へ行けば必ず○○が改善する」とまでは言えません。
それでも、森林浴を行う効果を「免疫力を上げるため」だけに限定する必要はなさそうです。
外の空気を吸う。緑を見る。少し歩く。ベンチに座ってぼーっとする。
それで気分が少しよくなるなら、それも十分に森林浴を楽しむ理由になります。
治療中なら、頑張って森へ行かなくてもいい
「NK細胞が活性化するなら、毎週森へ行かなきゃ!」
……と、新しい宿題を増やす必要はありません。
治療中は体調が日によって変わります。元気な日に近くの公園を少し歩く、緑の多い場所で休むなど、無理のない範囲で楽しめば十分です。
暑さや寒さ、足元、体力低下などには注意し、疲れたら早めに切り上げましょう。発熱など体調に問題があるときや、治療による感染リスクについて指示を受けている場合は、その指示を優先してください。
森林浴は「免疫力を上げるためにやらなければならないこと」ではなく、自分が気持ちいいと感じるなら、治療中の生活に取り入れられる+αの一つと考えるくらいがちょうどよさそうです。
キャンエビのまとめ
- 森林浴の後に、NK細胞活性など一部の免疫指標が上昇したヒト研究があります。
- 研究規模はまだ小さく、どの程度持続するかなど分かっていないこともあります。
- NK細胞が活性化することと、がんが縮小したり再発が減ったりすることは別です。
- 森林浴では免疫機能だけでなく、ストレスや気分などQOLに関係する研究も行われています。
- 「免疫力アップのため」と頑張るのではなく、体調がよければ気分転換として楽しむくらいでOKです。
参考資料
- Does Forest Therapy Have Physio-Psychological Benefits? A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials(系統的レビュー、2022-09-01)
- Phytoncides and immunity from forest to facility: A systematic review and meta-analysis(系統的レビュー、2024-01-01)
- Nature Exposure and Its Effects on Immune System Functioning: A Systematic Review(系統的レビュー、2021-02-05)
- Health and well-being benefits of spending time in forests: systematic review(系統的レビュー、2017-11-01)
- Effect of forest bathing trips on human immune function(レビュー論文、2007-01-01)
- Forest Bathing Enhances Human Natural Killer Activity and Expression of Anti-Cancer Proteins(原著研究、2007-01-01)








