がんと告げられたとき、頭が真っ白になった人もいれば、意外なほど冷静に医師の説明を聞いていた人もいるかもしれません。帰宅してから急に不安が押し寄せたり、何から手をつければいいのかわからなくなったりすることもあります。
がんと診断されたからといって、その日のうちに治療や今後の生活について、すべてを決める必要はありません。 医師から早急な検査や対応を指示されている場合は、その指示を優先してください。そうでなければ、まずは休み、少しずつ情報を整理しながら、次の診察に備えていけば大丈夫です。
告知直後の1週間に、何をしておくと役立つのか。そして、何を急がなくてもよいのか。順番に整理してみましょう。
告知された当日、まずは休んでも大丈夫
がんと告げられた直後の反応は、人によってさまざまです。涙が出る、頭が真っ白になる、何も感じない、いつもと変わらず冷静に話を聞ける。どのような反応であっても、おかしなことではありません。
強い不安や混乱によって、医師の説明を十分に覚えていないこともあります。「あのとき、先生は何と言っていたっけ?」と後から気になっても、必要なことは次の診察や病院への問い合わせで確認できます。
医師から緊急の対応を求められていなければ、告知された当日は、無理に情報を集めたり、大きな決断をしたりする必要はありません。誰かに話したい人もいれば、一人で静かに過ごしたい人もいるでしょう。少し調べることで気持ちが落ち着くなら、それも一つの過ごし方です。
その日のうちに何かをしようとしなくても大丈夫です。 まずは自分が落ち着ける方法で過ごしてください。
告知直後に、急いでやらなくてもよいこと
がんと診断されると、治療だけでなく、仕事や家族、お金、これからの暮らしについても考え始めるかもしれません。しかし、すべてを一度に判断する必要はありません。
医師から指示された検査や必要な手続きは別として、次のようなことは、その日のうちに結論を出さなくてもよいものです。
- 治療方針を一人で決めること:追加の検査や医師の説明を受けてから判断できる場合があります。判断が必要な期限は主治医に確認しましょう。
- 家族や友人、職場の全員に知らせること:誰に、いつ、どこまで話すかは自分で考えられます。ただし、付き添いや仕事の調整など、早めの連絡が必要な場合は別です。
- 夜通しインターネットで調べること:情報を集めるのは役立ちますが、疲れているときに無理をする必要はありません。
- 生存率などの数字を自分に当てはめること:統計は集団の傾向を示すものであり、個人の経過をそのまま予測するものではありません。
- 高額なサプリメントや自由診療を契約すること:効果や安全性、費用を十分に確認する前に決める必要はありません。
- 極端な食事制限や生活改善を始めること:治療前に特別な食事法へ急いで切り替える必要はありません。
- 退職など、生活を大きく変えること:治療と仕事を両立する方法や、利用できる制度を調べてから考えられます。
- 無理に前向きになろうとすること:不安や悲しみを感じることも自然な反応です。
ただし、「急がなくてもよい」は「何もしなくてもよい」という意味ではありません。 がんの種類や病状によっては、迅速な検査や治療方針の決定が必要になる場合もあります。医師から指示された期限や対応は必ず確認してください。
当日、できれば確認しておきたい3つのこと
告知された日に、言われた内容すべてを覚えて帰る必要はありません。ただ、次の3つがわかっていると、その後の予定を立てやすくなります。
- 次の受診日時:いつ、どこを受診するのか。
- 次に予定されている検査や説明:追加検査があるのか、次回は何について説明を受けるのか。
- 治療方針を決めるまでの目安:どのくらいの期間で判断する必要があるのか。
その場で確認できなかった場合は、後から病院に問い合わせても構いません。また、体調の変化があった場合の連絡方法について説明を受けている場合は、その指示を優先してください。
翌日からは、情報を1か所にまとめてみる
少し落ち着いてきたら、次の診察に向けて、手元にある情報を整理してみましょう。特別なノートやファイルを用意する必要はありません。紙のメモでも、スマートフォンのメモ機能でも、自分が使いやすい方法で十分です。
まとめておくと便利なのは、次のような情報です。
- 病名や、説明を受けた検査結果
- これまでの検査日と、今後の検査予定
- 次回の受診日時と診療科
- 紹介状や検査資料の有無
- 病院の連絡先
- 医師に聞いておきたいこと
すべてを正確に書き出せなくても問題ありません。わからないことは、次の診察で確認する項目として残しておきましょう。
また、病院から受け取った説明書や検査結果なども、一か所にまとめておくと探しやすくなります。
次の診察で聞きたいことをメモしておく
告知された直後は、次から次へと疑問が浮かぶことがあります。一方、いざ診察室に入ると、聞きたかったことを忘れてしまうかもしれません。
そんなときに役立つのが、簡単な質問メモです。思いついたことを自由に書き出し、その中から特に確認したいことを3つ程度選んでおくと、診察の時間を使いやすくなります。もちろん、質問を3つに制限する必要はありません。
例えば、次のような質問が考えられます。
- 現在、どこまで病気のことがわかっていますか?
- これから必要な検査は何ですか?
- 治療方針は、いつごろ決まりますか?
- 治療を始めるまでに、準備しておくことはありますか?
- 体調が変化した場合は、どこへ連絡すればよいですか?
診察には、信頼できる家族や友人に同席してもらう方法もあります。一人で説明を聞きたい場合は、メモを取ったり、医療者の許可を得て録音したりすることも考えられます。
大切なのは、自分が説明を理解しやすく、納得して判断できる方法を選ぶことです。
情報収集は、信頼できるところから少しずつ
がんと診断された後は、病名や治療法をインターネットで調べたくなるかもしれません。情報を集めること自体は悪いことではありませんが、検索結果には、医学的根拠が十分ではない情報や、特定の商品・治療を宣伝する情報も含まれています。
まずは、国立がん研究センターの「がん情報サービス」や、公的機関、医療機関、学会などの情報を参考にするとよいでしょう。
また、生存率や余命に関する数字を見つけても、それが自分の経過をそのまま示しているとは限りません。がんの種類や病期、治療内容などによって状況は異なります。気になる情報を見つけたときは、主治医に確認してみてください。
情報を調べることで不安が強くなる場合は、いったん検索をやめることも選択肢です。必要な情報を、一度にすべて理解しようとしなくても大丈夫です。
高額な治療や健康商品は、急いで契約しない
がんと診断された直後は、「少しでもよくなる方法があるなら試したい」と思うかもしれません。しかし、不安な気持ちにつけ込むような広告や、効果を過度に強調する情報には注意が必要です。
特に、高額なサプリメント、標準治療の代わりに行う代替療法、未承認の治療などについては、その場で契約したり、治療を始めたりしないようにしましょう。
補完療法を検討する場合も、標準治療との相互作用や安全性などを主治医に確認することが大切です。保険適用外の治療やサービスについては、費用だけでなく、期待できる効果や根拠も確認してください。
「今日中に決めなければならない」と契約を急がされた場合は、いったん判断を保留し、医師や公的な相談窓口に相談することをおすすめします。
仕事や家族のことも、少しずつ考えていく
治療が始まったら仕事を続けられるのか、家事はどうするのか、家族にはどのように伝えればよいのか。医療以外にも、考えることはたくさんあります。
ただ、治療内容が決まる前に、仕事を辞めたり、生活を大きく変えたりする必要があるとは限りません。治療の予定や体調への影響がある程度わかってから、職場との調整や利用できる制度を検討する方法もあります。
家族や友人への報告についても、誰にどこまで話すかは自分で考えてよいことです。付き添いや生活上の支援が必要な場合は、頼れる人に早めに相談することも考えてみましょう。
困ったときは、がん相談支援センターへ
「何から始めればいいのかわからない」「医師の説明を十分に理解できなかった」「仕事やお金のことが心配」。そんなときは、病院の相談窓口や、がん相談支援センターを利用できます。
がん相談支援センターは、全国のがん診療連携拠点病院などに設置されている相談窓口です。がんに関する情報だけでなく、治療中の生活、仕事、経済的な問題、気持ちの悩みなどについても相談できます。原則として、その病院に通院していない人でも無料で利用できます。
仕事と治療の両立については、厚生労働省の「治療と仕事の両立支援ナビ」でも相談先を調べられます。また、健康商品や契約に関するトラブルについては、消費生活センターなどに相談できます。
一人で全部を調べ、全部を判断しなければならないわけではありません。
キャンエビのまとめ
- 告知された当日:医師から緊急の指示がなければ、無理に決断や情報収集をせず、休むことを優先して構いません。
- 次の診察まで:病名や検査結果、予約日時などを整理し、聞きたいことを簡単にメモしておきましょう。
- 次の診察で:追加検査、治療方針を決める時期、体調が変化したときの連絡先などを確認しましょう。
- 急がなくてよいこと:高額な健康商品の契約、退職などの大きな生活上の決断、無理な情報収集や極端な食事制限。
- 困ったとき:がん相談支援センターなどの相談窓口を利用できます。
告知直後の1週間に、すべてを終わらせる必要はありません。 医師から指示された検査や対応を確認しながら、今できることを少しずつ進めていきましょう。
参考文献
- What to Expect After a Cancer Diagnosis — American Cancer Society
- Cancer Care Toolkit — American Cancer Society
- 健康食品(一般の方向け)— 消費者庁
- がん情報サービス — 国立がん研究センター
- 各都道府県の相談可能な支援機関 — 治療と仕事の両立支援ナビ
- 緩和ケア — がん情報サービス
ご注意
本記事は一般的な情報を提供するもので、個別の診断や治療方針を示すものではありません。必要な検査や治療開始の時期、症状が現れた場合の対応については、主治医や医療機関の指示を優先してください。






