がん治療中に、ヨガや鍼灸、マッサージ、サプリメント、健康食品などを取り入れている人もいます。こうしたものは、標準治療と一緒に使っても大丈夫なのでしょうか。
結論からいうと、何を取り入れるかによってかなり違います。治療中の症状やQOLの改善に役立つことが分かっているものがある一方、サプリメントやハーブの中には、抗がん剤などの働きに影響するものもあります。
「補完療法」と「代替療法」は違う
似た言葉ですが、補完療法と代替療法では意味が違います。
補完療法は、標準治療と一緒に使うものです。鍼灸、マッサージ、瞑想、サプリメントなど、さまざまなものが含まれます。一方、代替療法は標準治療の「代わり」に使うものを指します。
つまり、抗がん剤治療を続けながらヨガを行う場合は「補完」、抗がん剤治療を受けず、特定の食事療法だけでがんを治そうとする場合は「代替」という違いです。
標準治療を受けず代替療法のみを選んだ患者では、生存率が低かったという観察研究もあります。国立がん研究センターも、標準治療の代わりに民間療法のみを受けることは非常に危険だと注意を促しています。
標準治療と一緒に取り入れられるものもある
補完療法というと、「医学的な根拠がないもの」というイメージがあるかもしれません。しかし、すべてがそうというわけではありません。
たとえば、運動、マインドフルネス、ヨガ、太極拳・気功、鍼灸などの一部については、がん治療中や治療後の疲労、不安、痛みなどへの効果が研究されています。ASCO(米国臨床腫瘍学会)とSIO(統合腫瘍学会)のガイドラインでも、症状や状況に応じていくつかの方法が推奨されています。
ただし、同じ方法でも、がんの種類や治療内容、体の状態によって適しているかどうかは変わります。たとえば運動なら、骨転移がある場合や手術直後などには内容や強度の調整が必要になることがあります。
補完療法は「がんを治す」ためだけに使われるものでもありません。治療に伴う疲労や痛み、不安などを軽くしたり、生活の質を保ったりする目的で使われるものもあります。
サプリメントやハーブは少し事情が違う
特に注意したいのが、健康食品、サプリメント、ハーブなどです。
「食品だから薬には影響しない」「自然由来だから安全」とは限りません。成分によっては、薬が体内で分解・排出される仕組みに影響し、薬の血中濃度を変えてしまうことがあります。
よく知られている例のひとつが、ハーブのセントジョーンズワートです。抗がん剤のイリノテカンや分子標的薬のイマチニブなどと併用すると、薬の血中濃度が低下することが報告されています。
グレープフルーツのように、薬との組み合わせによって注意が必要な食品もあります。逆に、すべての抗がん剤でグレープフルーツを避けなければならないわけではありません。
大切なのは、「サプリメントだから危険」「食品だから安全」と種類だけで判断するのではなく、実際に使っている薬と、その成分との組み合わせを見ることです。
抗酸化サプリはどうなの?
ビタミンCやビタミンEなどの抗酸化成分について、「治療中に摂った方がいい」「抗がん剤や放射線治療中は避けた方がいい」と、正反対の情報を見かけることがあります。
この問題については研究結果が一様ではなく、抗酸化サプリメントを治療中に使用した場合の影響は、まだはっきりしていない部分があります。一部の研究では治療成績への悪影響が報告されているため、NCI(米国国立がん研究所)も、がん治療中の抗酸化サプリメントは慎重に使用するよう案内しています。
これは、野菜や果物など普通の食事からビタミンを摂ることまで避ける、という意味ではありません。特に高用量のサプリメントを追加したい場合は、治療との組み合わせを確認しておく方がよいでしょう。
「併用できるか」は、補完療法だけを見ても分からない
同じサプリメントでも、使っている抗がん剤が違えば相互作用の可能性も変わります。同じ運動でも、治療内容や体の状態によって適した強度は変わります。
そのため、「○○はがん治療中でも大丈夫?」という質問には、その補完療法だけを見て一律に答えることができません。
サプリメントや健康食品なら、商品名だけでなく成分や1日の摂取量が分かるパッケージや写真を診察時に見せると確認しやすくなります。主治医だけでなく、薬との相互作用については薬剤師に聞くこともできます。
補完療法にも「目的」がある
もうひとつ分けて考えたいのが、「何のために使うのか」です。
たとえば、ヨガを治療中の疲労や不安を軽くするために行うことと、「ヨガでがんを治す」と考えることは同じではありません。鍼灸やマッサージ、サプリメントなどについても、症状を和らげる目的なのか、がんそのものへの効果を期待しているのかで、必要になる根拠は変わってきます。
補完療法について調べるときは、「効果がある」という言葉だけでなく、何に対する効果が研究されているのかを見ると分かりやすくなります。疲労や痛みが改善した研究があったとしても、それだけでがんが小さくなったり、生存期間が延びたりすることを意味するわけではありません。
キャンエビのまとめ
- 標準治療と一緒に使うものを「補完療法」、標準治療の代わりに使うものを「代替療法」と呼びます。
- 補完療法の中には、治療中の疲労、不安、痛みなどの改善について研究されているものがあります。
- サプリメントやハーブ、健康食品は、抗がん剤などと相互作用する場合があります。
- 「自然由来」「食品」であることだけでは、治療中にも安全とは判断できません。
- 補完療法の研究を見るときは、「がんそのものへの効果」なのか「症状やQOLへの効果」なのかを分けて考えることも大切です。
- サプリメントなどを取り入れる場合は、商品名だけでなく成分や摂取量が分かるものを主治医や薬剤師に見せると確認しやすくなります。
補完療法は、標準治療と一緒なら何でも安全というわけではありません。一方で、すべてを一括して「意味がないもの」と考える必要もありません。
「何を使うか」「何のために使うか」「どの治療と組み合わせるか」を分けて考えると、自分が検討しているものを整理しやすくなります。
参考資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がんと民間療法(健康食品・サプリメント・食事療法を中心に)」(民間療法・補完代替療法、健康食品やサプリメントとがん治療の併用について)
- 厚生労働省 eJIM「冊子・資料」(「がんの補完代替医療ガイドブック[第3版]」など、補完・代替療法に関する公的資料)
- National Cancer Institute (NCI), Cancer Therapy Interactions With Foods and Dietary Supplements (PDQ®) – Patient Version(がん治療薬とサプリメント・ハーブ・食品との相互作用について)
- Management of Fatigue in Adult Survivors of Cancer: ASCO–Society for Integrative Oncology Guideline Update(ASCO・SIO診療ガイドライン。運動、マインドフルネス、太極拳・気功、ヨガなどとがん関連疲労について)
- Integrative Oncology Care of Symptoms of Anxiety and Depression in Adults With Cancer: Society for Integrative Oncology–ASCO Guideline(ASCO・SIO診療ガイドライン。マインドフルネス、ヨガ、鍼灸などと不安・抑うつ症状について)








