診断数が増えても、新しいがんが増えたとは限りません
がん検診を行うと、それまで見つかっていなかったがんが発見されるため、がんと診断される人が一時的に増えることがあります。また、将来症状を起こさなかった可能性のあるがんまで見つかる「過剰診断」も、診断数が増える理由の一つです。
一方、X線など放射線を使う検査には、将来のがんのリスクをわずかに増やす可能性があります。検診は、その利益と不利益を踏まえて定められた対象年齢や受診間隔に沿って受けることが大切です。
今回の検証で分かったこと
検診後にがんの診断数が増えても、検診によって新しいがんが増えたとは限りません。それまで見つかっていなかったがんの発見や、過剰診断を含めて考える必要があります。
放射線を使う検査のリスクは、検査の種類や受ける回数などによって異なります。
検診後に、がんと診断される人が増えるのはなぜ?
がん検診を始めると、それまで症状がなく見つかっていなかったがんが、検診によって発見されます。そのため、検診の導入後などに、がんと診断される人が一時的に増えることがあります。これは、検診によって新しいがんが急に発生したという意味ではありません。
また、検診では、将来その人が生きている間に症状を起こしたり、死亡の原因になったりしなかったと考えられるがんまで見つかることがあります。これを「過剰診断」と呼びます。誤診とは異なり、見つかった病変自体はがんです。
しかし、診断された時点で「このがんは将来進行しない」と確実に見分けることは難しいため、結果として必要ではなかった可能性のある治療や、その後の検査につながることがあります。
ここが要点
検診後にがんの診断数が増えても、それだけで「検診によって新しいがんが増えた」とは言えません。もともと存在していたがんが早く発見された場合と、過剰診断によって見つかった場合を分けて考える必要があります。
過剰診断の割合は、検診の種類によって異なります
国立がん研究センターのデータや検診データブックでは、検診導入後に検出率が上がる実態が示されていますが、これは発見効果と過剰診断を含むため、単純に罹患数が増えた=健康状態の悪化とは言えません。
『過剰診断が全体の何%か』の具体的な割合は、がん種(乳がん、肺がんなど)、検診方法、追跡期間で大きく変わります。本稿で用いた資料群は概念と傾向を示すものであり、がん種ごとの精密な数値化を行うには、該当する個別の長期追跡研究やRCTの結果を参照する必要があります。
結論として、検診で検出されるがんの増加は説明可能ですが、個々の検診の利益と害のバランスは検査の種類・年齢・間隔ごとに評価する必要があります。
ここが要点
検診で見つかるがんの増加は説明可能だが、過剰診断の割合など細部は検査ごとに違うため注意が必要です。
がん検診は、利益と不利益のバランスで考えます
胃、大腸、肺、乳房、子宮頸などの各検診について、死亡率低下のエビデンスや過剰診断の程度は異なります。厚生労働省の指針は対象年齢・間隔を定め、科学的根拠に基づく実施を求めています。
集団スクリーニング(無症状者)と症状がある場合の診療目的は異なります。無症状者への検診は早期発見による利益を目指しますが、過剰診断や被ばくといった不利益も生じ得ます。
がん検診の主な目的は、対象となるがんによる死亡を減らすことです。検診によっては、前がん病変の発見・治療を通じて、浸潤がんの発生を減らすことも期待されます。
放射線を使う検査には、わずかな発がんリスクがあります
X線やCTなど放射線を使う検査には、将来のがんのリスクをわずかに増やす可能性があります。ただし、リスクは検査の種類、放射線量、受ける年齢や回数などによって異なります。推奨されているがん検診では、放射線による不利益を含め、検診によって得られる利益とのバランスが検討されています。
BEIR VIIなどの評価は、低線量放射線でも発がんリスクを推定し得ると結論しており、個々回の診断用検査での追加リスクは通常小さいとされています。しかし、線量の累積が増えるとリスクは相対的に大きくなります。
臨床現場では検査を行う際に被ばく線量の低減や検査の正当化が求められます。受診者側も推奨されている対象年齢や受診間隔を確認し、必要以上に同じ検査を重ねないことが大切です。
- 放射線によるリスクは、検査の種類、放射線量、受ける年齢や回数などによって異なります。推奨された検診では、放射線による不利益だけでなく、がんによる死亡を減らす利益とのバランスが検討されています。
- 推奨外・高頻度の検査は累積被ばくでリスク増加の可能性がある。
- 医療現場では検査の正当化と最適化(低線量化・適切な被検者選定)が重要。
過剰診断は、どのような不利益につながる?
過剰診断が起きると、将来症状を生じなかったかもしれない病変が治療対象となり、手術や放射線・薬物療法による副作用や生活への影響が生じる可能性があります。患者と家族には、検査結果の意義や治療の選択肢(治療、経過観察など)を丁寧に説明する情報提供が重要です(BMJレビュー)。
過剰診断を完全に避けることは難しいため、検診を受ける前にメリットとデメリットを理解し、陽性時には医師と治療方針や経過観察の可否について話し合うことが大切です。
- 過剰診断は治療による不必要な害を生む可能性がある。
- 検診で「要精密検査」と判定されても、がんと確定したわけではありません。案内された精密検査を受け、がんの有無を確認することが大切です。がんと診断された場合に、病状に応じて治療方法や経過観察の可否を検討します。
- 情報提供と患者参加型の意思決定が過剰診断対策になります。
がん検診は、対象年齢と受診間隔を確認しましょう
基本は国や学会の推奨する対象年齢・間隔に従うことです。これらの指針は、利益(例えばがん死亡の減少)と害(過剰診断・被ばく)を考慮して設定されています(厚生労働省指針)。
個別事情(年齢、既往、喫煙歴、家族歴、不安の強さ)によって最適な検診は変わります。受診前後にかかりつけ医や検診担当医に、自分にとっての利益と害、検査の頻度や代替法について相談してください。
症状がある場合は検診ではなく医療機関を受診して、必要な診療を受けることが大切です。
- まずは国や学会の指針に沿った検診を基本としてください。
- 体に気になる症状がある場合は、検診ではなく医療機関での診療を優先してください。
- 検診で「要精密検査」と判定された場合は、まず案内された精密検査を受け、がんの有無を確認することが大切です。
キャンエビのまとめ
- 検診で短期的に『がんが増える』のは主にそれまで見つかっていなかったがんの発見と過剰診断のためであり、検査そのものが多数の新しいがんを生むという単純な因果関係ではありません。
- 放射線を使う検査は理論的に発がんリスクを持ちますが、通常の推奨頻度での個々回のリスクは小さいと評価されています。推奨外の高頻度検査は避けるべきです。
- 検診の効果は罹患数ではなく死亡率低下や進行予防で評価されるため、国や学会の指針に従い、個別事情は医師と相談して受診判断を行ってください。
参考文献
- 指針で定めるがん検診の内容(通知別添)(診療指針、2008-随時更新)
- 国立がん研究センター がん検診の考え方(がん検診・医療の評価)(研究機関の公式発表)
- がん検診データブック(国立がん研究センター がん情報サービス)(研究機関の公式発表)
- Health Risks from Exposure to Low Levels of Ionizing Radiation: BEIR VII Phase 2 (Public summary)(全米研究評議会による専門家報告書、2006)
- Overdiagnosis in primary care: framing the problem and finding solutions (BMJ review)(BMJ分析・レビュー、2018-08-08)
- Overdiagnosis in lung cancer screening (Lancet Respiratory Medicine review)(査読済み論文、2021)
- Epidemiological Studies of Low-Dose Ionizing Radiation and Cancer: Rationale and Framework (review, PMC)(査読済み論文、2020)
ご注意
この記事は一般向けの説明を目的としています。体の症状がある場合や個別の検査・治療判断が必要な場合は、速やかに医療機関を受診して医師の評価を受けてください。








