SNSで流れてきたがんの情報。たくさん「いいね」がついていたり、何度もシェアされていたりすると、「これだけ広まっているなら本当なのかな」と思ってしまうことがあります。ところが、日本語のTwitter(現在のX)に投稿されたがん情報を調べた研究では、少し気になる結果が出ています。
研究者らは2022年8〜9月の日本語のがん関連投稿を収集し、一定の条件を満たした投稿のうち「いいね」が多かった上位100件を、がん診療に携わる医師2人が評価しました。
その結果、44件に誤情報、31件に有害な情報が含まれていると判定されました。
さらに気になるのは、誤情報の方が正確な情報よりも多くリポストされ、有害な情報も安全な情報より多くリポストされていたことです。つまりSNSでは、「たくさん広まっている=正しい」とは限らないということです。
どんな情報が「誤情報」と判断された?
研究では、単純な「ウソ」だけを誤情報としては扱っていません。まだ証明されていないことを事実のように伝えるもの、すでに否定されているもの、研究結果を不適切に当てはめたもの、エビデンスの強さを実際以上に見せるもの、誤解を招く表現なども含めて評価しています。
これは、がん情報を見るときにとても大事なポイントです。完全な作り話だけに気をつければいいわけではありません。本当の研究を紹介していても、「マウスで確認された」を「人のがんに効く」に変えてしまったり、小さな研究結果を「効果が証明された」と紹介したりすれば、受け取る意味は大きく変わってしまいます。
「有害な情報」で多かったのは、何かを促す情報だけではなかった
研究では31件が有害な情報と判定されました。特に多かったのが、必要な医療行為などを「しない」方向へ導く情報です。
研究では、HPVワクチンを受けないよう促すものや、抗がん剤治療を避けるよう勧めるものなどが例として挙げられています。また、標準治療の代わりに、十分な根拠のない代替療法を勧める投稿も問題として取り上げられています。SNSの情報で怖いのは、間違ったものを買ってしまうことだけではありません。本来受けられたはずの治療や予防から離れてしまうこともあります。
「いいね」の数は、正しさの点数ではない
SNSでは、たくさんの人が反応している投稿ほど目立ちます。けれど、この研究では誤情報の方が正確な情報より多くリポストされ、有害な情報も安全な情報より多くリポストされていました。
だから、
「1万いいねがついている」
「何千回もシェアされている」
「コメント欄にも信じている人がたくさんいる」
ということ自体は、その医療情報が正しいことの証明にはなりません。
もちろん、SNSのがん情報がすべて危険という意味でもありません。患者同士だからこそ共有できる経験や、生活上の工夫、気持ちの支えになる投稿もたくさんあります。大切なのは、体験談と医学的な主張を同じものとして扱わないことです。
「私はこうだった」は、その人の大切な経験。一方で、「だからこの治療は効く」「この治療は受けない方がいい」と一般化するなら、別に根拠を確認する必要があります。
この研究にも限界がある
この研究から「日本のがん情報の44%が間違っている」と考えるのは正確ではありません。
この研究が詳しく評価したのは、2022年8〜9月に収集された日本語Twitter投稿のうち、研究の条件を満たし、「いいね」が多かった上位100件です。調査期間も2か月と短く、研究者自身も選択バイアスや評価の主観性などを限界として挙げています。
現在のXやThreads、Instagram、YouTubeなどに、そのまま同じ割合を当てはめることもできません。それでも、「よく拡散されている医療情報だから正しいとは限らない」ということを考える材料にはなる研究です。
キャンエビのまとめ
- 日本語Twitterのがん関連情報を調べた研究では、「いいね」上位100件のうち44件が誤情報、31件が有害な情報と判定された。
- これは「日本のSNS上のがん情報の44%が間違い」という意味ではない。
- 誤情報や有害情報の方が多くリポストされる傾向も確認された。
- 「いいね」「リポスト」「フォロワー数」は、医学的な正しさを保証するものではない。
- 患者さんの体験談と、治療効果などについての医学的な主張は分けて考える。
- 気になる治療情報を見つけたら、元になった研究や公的医療情報を確認し、治療に関わる判断は主治医などの医療者にも確認する。








