抗がん剤治療中、「タンパク質をしっかり摂った方がいい」と聞くことがあります。でも、しっかりってどのくらいなのでしょうか。卵を一つ追加すれば十分なのか、それとも肉や魚を毎食食べた方がいいのか。そもそも、なぜ治療中にタンパク質が大切なのでしょう。
がん患者の栄養についての国際的なガイドラインでは、タンパク質摂取量を1日あたり体重1kgにつき1.0g以上、可能であれば1.5g程度までとすることが提案されています。たとえば体重50kgなら約50〜75g、60kgなら約60〜90gが一つの目安です。
ただし、これは抗がん剤治療を受けるすべての人が必ずこの量を食べなければならない、という意味ではありません。食事量や体重の変化、腎機能などによって必要量は変わります。
そもそも、なぜタンパク質が必要なの?
タンパク質というと「筋肉を作る栄養素」というイメージが強いかもしれません。でも実際には、筋肉だけでなく皮膚や臓器、酵素など、体のさまざまなものを作る材料として使われています。
がんになると、食欲の低下や炎症などによって、体重や筋肉量が減りやすくなることがあります。さらに治療中は、吐き気、口内炎、味覚の変化などによって食事量そのものが減ってしまうこともあります。そのため、がん患者の栄養管理では、十分なエネルギーとタンパク質を摂ることが重視されています。
ただし、タンパク質だけを増やせばいいわけではありません。食事全体のエネルギーが不足している状態では、摂ったタンパク質もエネルギー源として使われます。ご飯やパンなども含めて十分に食べられているかを見ることも大切です。
体重50kgなら50〜75g。実際にはどのくらい?
「1.0〜1.5g/kg/日」と言われても、普段の食事ではイメージしにくいですよね。体重別に計算すると、おおよそ次のようになります。
- 45kg:約45〜68g
- 50kg:約50〜75g
- 55kg:約55〜83g
- 60kg:約60〜90g
- 65kg:約65〜98g
食品に含まれるタンパク質量も見てみましょう。食品や製品によって違いますが、卵1個なら約6〜7g、牛乳200mlなら約6〜7g、豆腐100gなら約6〜8g、肉や魚100gならおおむね20g前後が目安になります。
ここで注意したいのは、「肉100gを食べた=タンパク質100g」ではないこと。食品そのものの重量と、その中に含まれるタンパク質量は別です。
一度に大量に食べる必要もありません。朝に卵やヨーグルト、昼に肉や魚、間食に牛乳、夜に豆腐を加えるなど、普段の食事の中にもタンパク質は少しずつ含まれています。
「全然届いていないかも」と思ったら
治療中は、計算上の目標量が分かっても、その通りに食べられないことがあります。吐き気がある、味が変に感じる、口内炎で噛むのがつらい、すぐお腹いっぱいになる――そんなときに「あと30g食べなければ」と数字に追われると、食事そのものが負担になってしまいます。
一度に食べにくければ、食事を小分けにしたり、間食にヨーグルトや牛乳などを加えたりする方法があります。通常の食事だけでは十分に摂れない場合には、少量でエネルギーやタンパク質を摂れる経口栄養補助食品(ONS)が使われることもあります。
実際に、抗がん剤などの全身治療を受けている患者を対象としたランダム化比較試験では、高タンパクの経口栄養補助食品を利用したグループで、推奨されるタンパク質摂取量に到達した人が増えたことが報告されています。
ただし、ONSやプロテインを全員が使う必要があるわけではありません。普段の食事で十分に摂れているなら、追加する必要がないこともあります。
まず「今どのくらい食べている?」を見てみる
自分がどのくらいタンパク質を摂っているのか分からない場合は、一度だけでも普段の食事を振り返ってみるとイメージしやすくなります。
たとえば「朝はパンとコーヒーだけ」「昼はうどん」「夜はご飯と野菜中心」という食事が続いているなら、タンパク質を含む食品が少ないことに気づくかもしれません。反対に、卵、乳製品、肉、魚、大豆製品などを毎食何かしら食べているなら、思っていたより摂れている場合もあります。
特に治療中は、目標値だけではなく、最近食べる量が減っていないか、体重が落ちていないかも一緒に見ておきたいところです。体重減少が続いている、食事量がかなり減った、食べられない状態が続いているときは、病院の管理栄養士などに相談すると、自分の食事内容に合わせて必要量を考えてもらえます。
1.0〜1.5g/kgをそのまま当てはめない方がいい人も
タンパク質の必要量は全員同じではありません。特に腎機能が低下している場合などは、病状や治療内容によってタンパク質量の調整が必要になることがあります。
そのため、「がん治療中は1.5g/kg必要らしい」と知っても、自己判断で大量のプロテインなどを追加する必要はありません。腎臓の病気がある、医師から食事について指示を受けている、あるいは食事量や体重が大きく変わっている場合は、主治医や管理栄養士に自分の場合の目安を確認した方がよいでしょう。
キャンエビのまとめ
- がん患者のタンパク質摂取量は、1日あたり体重1kgにつき1.0g以上、可能なら1.5g程度までが一つの目安として提案されています。
- 体重50kgなら約50〜75g、60kgなら約60〜90gです。
- タンパク質は筋肉だけでなく、体のさまざまな組織などの材料になります。
- タンパク質だけでなく、十分なエネルギーを摂れていることも重要です。
- 治療中に食事量や体重が減っている場合は、目標量だけを追うより、実際にどのくらい食べられているかを見ることも大切です。
- 腎機能などによって適切な量は変わるため、全員に同じ数字が当てはまるわけではありません。
「タンパク質を摂らなきゃ」と考えると少し大変そうですが、まずは普段の食事に卵、肉、魚、乳製品、大豆製品などがどのくらい入っているか、一度見てみるところからでもよさそうです。
参考文献
- ESPEN practical guideline: Clinical Nutrition in cancer(診療ガイドライン)
- がん患者診療のための栄養治療ガイドライン 2024年版|Minds(診療ガイドライン)
- High Protein Oral Nutritional Supplements Enable the Majority of Cancer Patients to Meet Protein Intake Recommendations during Systemic Anti-Cancer Treatment(ランダム化比較試験)
- Cancer cachexia in adult patients: ESMO Clinical Practice Guidelines(診療ガイドライン)








