友人の旅行写真を見て、以前なら「楽しそう!」と思えたのに、今は素直に喜べない。元気に働く同僚や、何気なく週末の予定を立てている人を羨ましく感じることもあります。
相手が悪いわけではないし、幸せでいてほしい気持ちもある。それなのに、どうしてこんな気持ちになるんだろう。がんになってから感じる嫉妬や羨ましさには、自分自身の生活が変わったことへの悲しさが隠れているのかもしれません。
相手を祝福したいのに、羨ましいのはなぜ?
がんになってから、以前は当たり前だったことが難しくなる場合があります。気軽に旅行すること、仕事の予定を立てること、体調を気にせず友人と会うこと。そんなとき、健康な人の何気ない日常が、以前の自分の生活を思い出させることもあります。
がん患者さんの心の問題を扱う「サイコオンコロジー(精神腫瘍学)」では、病気や治療による身体の変化だけでなく、仕事や家庭での役割、将来の見通しが変わることによる心理的な負担も扱います。
例えば、友人の旅行写真を見てつらくなるのは、その友人が嫌いだからとは限りません。「自分も以前は気軽に出かけられたのに」という喪失感や、「どうして自分だけ、こんなに生活が変わってしまったんだろう」という不公平感が、羨ましさにつながっているのかもしれません。
心理学には、自分と他人を比べる「社会比較」という考え方もあります。健康な人の楽しそうな姿を見ると、相手が持っているものと、今の自分には難しくなったことの違いが、強く意識される場合があります。特にSNSでは、旅行や外食など楽しい場面が目に入りやすく、何気なく見ていたつもりでも、気持ちが沈むことがあります。
そして、もう一つ知っておきたいのが「混合感情」です。人は、一つの出来事に対して、喜びと悲しみなど異なる感情を同時に抱くことがあります。
友人の旅行を心から楽しんでほしい。でも、自分は行けないことが悲しい。元気に働く同僚を応援したい。でも、以前のように働けない自分が悔しい。そんな気持ちは、どちらか一方が本音で、もう一方が嘘というわけではありません。
誰かを羨ましく思うことと、その人を嫌うことは、同じではありません。
つらい話題から、少し距離を置いてもいい
友人の投稿を見るのがつらいときは、SNSをしばらく見なかったり、特定のアカウントをミュートしたりする方法もあります。相手との関係を終わらせるわけではなく、今の自分が無理なく過ごすための距離の取り方です。
直接会っているときも、楽しい話を聞くのがつらければ、無理に話を合わせる必要はありません。「今日はちょっと疲れているから、また今度聞かせてね」と話題を変えることもできます。
相手を祝福できる日もあれば、そうできない日もある。今の気持ちに合わせて、付き合い方を変えてもいいと思います。
つらさが長く続くときは
羨ましさや悲しさが長く続いて、眠れない、食事が取れないなど、日常生活に影響が出ているときは、主治医や病院の相談窓口に話してみてください。がん相談支援センターでは、治療のことだけでなく、がんになってからの気持ちや人間関係についても相談できます。
自分を傷つけたい、死にたいという気持ちがある場合は、一人で抱えず、医療機関やこころの相談窓口に早めに相談してください。今すぐ自分を傷つけてしまいそうなときや、すでに自傷してけがをしているなど、差し迫った危険がある場合は119番に連絡してください。
キャンエビのまとめ
- 健康な人を羨ましく思う背景には、病気によって変わった生活や、以前の日常への思いがあるかもしれません。
- 誰かの幸せを願う気持ちと、その人を羨ましく思う気持ちは、同時に存在することがあります。
- SNSや会話がつらいときは、少し距離を置いても構いません。無理に気持ちを切り替えたり、前向きになったりする必要はありません。
参考文献・相談先
- 参考文献・相談先
- Mixed Emotions Across Adulthood: When, Where, and Why? (レビュー論文、2017年) 喜びと悲しみなど、異なる感情が同時に生じる「混合感情」についての研究。
- Psycho-Oncology: A Review for the General Psychiatrist (レビュー論文、2009年) がんに伴う心理的な問題や、精神面のケアについての総説。
- がん相談支援センターを探す|国立がん研究センター がん情報サービス がんに関する不安や生活上の悩みについて相談できる窓口の案内。
- まもろうよ こころ|厚生労働省 電話やSNSなど、こころの悩みに関する相談先の案内。








