点滴室(いわゆる「ケモ室」)で、隣の人の点滴が先に終わって帰っていく。それなのに、自分の点滴はまだまだ続きそう。
「同じような抗がん剤治療なのに、私の点滴だけ遅くない?」「もしかして、私は薬が入りにくい体質なの?」
でも、点滴にかかる時間は、人同士で単純に比べることができません。 基本的には「その人の体に薬が入る速さ」ではなく、使う薬の種類や組み合わせ、それぞれの薬で決められた投与方法などによって決まります。
点滴の時間は、まず「薬」で決まる
抗がん剤は、どの薬でも同じ速さで点滴できるわけではありません。薬ごとに投与方法が決められていて、短時間で投与するものもあれば、数時間かけて投与するもの、長時間持続して投与するものもあります。
さらに、抗がん剤だけを一本点滴して終わりとは限りません。吐き気やアレルギー反応などを予防するための前投薬を先に入れたり、複数の抗がん剤を順番に投与したり、薬剤の切り替え時にライン内の薬剤を生理食塩水で流したりすることもあります。
つまり、隣の人と自分が同じ「抗がん剤の点滴」を受けているように見えても、使っている薬や組み合わせ、投与の順番が違えば、終わる時間も違って当然なのです。
「薬が入りにくい体質だから遅い」わけではない
点滴が長いと、「私は薬を吸収するのが遅いのかな?」と思うかもしれません。でも、基本的にはそうではありません。
点滴は静脈から直接薬を投与する方法です。投与速度は「この人の体にはゆっくりしか薬が入らない」といった体質で決めるのではなく、その薬を安全に投与するために定められた方法を基本として設定されます。
もちろん、肝臓や腎臓の機能、体格、その日の検査結果などによって薬の「量」が調整されることはあります。また、投与中に体調の変化が起きれば、「速度」が変更されることもあります。
ただ、普段から点滴に時間がかかること自体を、「自分は薬が入りにくい体質だから」と考える必要はありません。
初回の点滴は長くなることがある?
薬によってはあります。初めて使う薬では、投与中にアレルギー反応やinfusion reaction(点滴に伴って起こる反応)が出ないか慎重に確認する必要があります。そのため、薬によっては最初はゆっくり投与し、問題がなければ段階的に速度を上げる方法がとられます。
また、初回は治療の説明や確認事項が多かったり、投与後に状態を確認する時間が必要だったりして、結果として病院にいる時間が長くなることもあります。
一方で、すべての抗がん剤が「初回はゆっくり、2回目から速くなる」わけではありません。投与方法は薬によって違います。
「初回だから今日は長いですよ」「問題なければ次回から少し短くなります」と説明された場合は、そうした薬の投与方法によるものと考えてよいでしょう。
途中で点滴が遅くなったり止まったりすることもある
最初から決められた投与時間とは別に、治療中の反応によって速度を変更することもあります。
たとえば点滴中に発疹、かゆみ、息苦しさ、寒気、血圧の変化などが起きた場合、医療スタッフが点滴を一時停止したり、速度を落としたりすることがあります。症状や薬によって対応は異なりますが、これは薬が入りにくくなったのではなく、安全のために医療スタッフが調整しているということです。
点滴中にいつもと違う症状を感じたら、「これくらいなら大丈夫かな」と我慢せず、その場で看護師さんに伝えましょう。
隣の人より遅くても、気にしなくて大丈夫
隣の人が1時間で帰って、自分はまだ点滴中。そんな場面を見ると、「私だけ遅いのは何か理由があるのかな」と気になるかもしれません。
でも、相手が何の薬を使っているのか、前投薬はいくつあるのか、何種類の薬を投与するのか、何回目の治療なのかは、外から見ただけでは分かりません。
点滴時間は、その人の体の強さを測るものでも、抗がん剤の効き目を表すものでもありません。気になるときは、看護師さんに「今日はあとどのくらいかかりますか?」と聞いて大丈夫です。帰宅時間の目安が分かるだけでも、ちょっと気持ちが楽になることがあります。
キャンエビのまとめ
- 抗がん剤の点滴時間は、基本的に薬の種類・組み合わせ・投与方法などによって決まります。
- 「薬が入りにくい体質だから点滴が遅い」というわけではありません。
- 薬によっては、初回は慎重に投与し、問題がなければ次回以降に投与時間が変わることがあります。
- 投与中に症状が出た場合、安全のために点滴を遅くしたり一時停止したりすることがあります。
- 採血・診察・薬剤の調製などによって、病院にいる時間そのものが長くなることもあります。
- 隣の人より点滴が長くても、それだけで自分の体に問題があるという意味ではありません。
点滴の長さも、隣の人とは比べなくて大丈夫。 「私だけ遅い?」と思ったら、まずは「今日はあとどのくらいかかりますか?」と聞いてみましょう。
参考文献
- American Society of Clinical Oncology / Oncology Nursing Society. Antineoplastic Therapy Administration Safety Standards
- Oncology Nursing Society. Acute Infusion-Related Reactions: How to Recognize and Intervene When These Reactions Occur in Practice
- 国立がん研究センター がん情報サービス「薬物療法」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「外来で治療を受けるとき」








