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がんと診断されてから眠れない。どうすればいい?

がんの診断後、眠れない⽇が続いたらどうする?

布団に入ると、昼間は考えないようにしていたことが次々に浮かんでくる。これからの治療、仕事や家族のこと、検査結果への不安。ようやく眠れたと思っても夜中に目が覚め、時計を見るとまだ午前3時。そんな夜が続いていませんか。

がんと診断された後は、眠れなくなることがあります。診断による不安や緊張だけでなく、痛みなどの体の症状や生活リズムの変化が関係している場合もあります。

眠れないときには、自宅で試せる工夫もあれば、医療機関で受けられる治療もあります。「こんなことで相談していいのかな」と思うかもしれませんが、不眠も医師や看護師に相談してよい問題です。

がんと診断された後、なぜ眠れなくなるの?

がんと診断されると、それまで考えたこともなかった問題が一度に押し寄せてきます。治療はうまくいくだろうか、仕事は続けられるだろうか、家族にはどう伝えようか。昼間は仕事や家事で気が紛れていても、夜になって静かになると、さまざまな心配事が浮かんでくることがあります。

眠れない原因は、不安だけとは限りません。がんによる痛みや体の不快感、もともと抱えていた睡眠の問題などが関係する場合もあります。また、治療が始まってからは、薬の影響で眠りにくくなることもあります。例えば、抗がん剤の副作用を抑えるために使うステロイドは、人によって寝つきが悪くなる原因になります。

不眠には、なかなか寝つけない「入眠困難」、夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」、朝早く目が覚めて眠れなくなる「早朝覚醒」などがあります。複数の症状が重なることもあり、睡眠の状態は人によって異なります。

そして、眠れない夜が続くと、「今日こそ眠らなければ」と意識するようになることがあります。明日の仕事や体調が心配で時計を何度も確認し、かえって目が冴えてしまう。こうした悪循環が、不眠を長引かせる場合もあります。

眠れないと、がんに悪い影響がある?

眠れない日が続くと、「睡眠不足で免疫力が落ちて、がんが悪化するのでは?」と心配になる人もいるかもしれません。

睡眠は、心身の健康を保つうえで大切です。睡眠不足が続くと、日中の疲労感や集中力の低下、気分の落ち込みなどが起こり、生活に影響することがあります。

ただし、がんと診断された後に数日眠れなかったからといって、それだけでがんが進行するとは言えません。 睡眠とがんの関係についてはさまざまな研究がありますが、個々の患者の短期間の不眠が、がんの経過にどのような影響を及ぼすかは明確ではありません。

眠れないことを、さらに大きな不安の原因にする必要はありません。まずは、日中を少しでも楽に過ごせるよう、睡眠の問題に対処していくことが大切です。

今夜から試せる、眠れないときの工夫

不眠への対処として、睡眠のリズムや寝床での過ごし方を見直す方法があります。すべてを一度に変える必要はありません。自分の体調や生活に合いそうなものから試してみましょう。

朝は、できるだけ同じ時間に起きる

夜に眠れなかったからといって、毎朝起きる時間を大きく変えると、睡眠と覚醒のリズムが乱れやすくなります。無理のない範囲で起床時刻をそろえ、朝はカーテンを開けて自然の光を浴びると、体内時計を整える助けになります。

ただし、体調が悪いときまで無理に起きたり、必要な休息を我慢したりすることはありません。治療中の疲労が強い場合は、休み方についても医療スタッフに相談しましょう。

眠れないときは、無理に寝ようとしない

布団に入ってもなかなか眠れないとき、長い時間「早く寝なければ」と考え続けると、寝床に入ること自体が緊張につながる場合があります。

そんなときは、いったん寝床を離れ、薄暗い場所で静かな音楽を聴いたり、本を読んだりして、眠気が戻るのを待つ方法があります。これは、不眠の認知行動療法でも用いられる考え方の一つです。

ただし、夜間の移動でふらつく人や、痛みが強い人は、無理に起き上がる必要はありません。安全を優先し、楽な姿勢で静かに過ごすなど、自分の体調に合わせてください。

心配事は、寝る前に少し書き出してみる

治療のことや仕事のことが頭から離れない場合は、気になっていることを紙に書き出してみる方法もあります。

「次の診察で聞きたいこと」「仕事で連絡しておくこと」など、具体的に書いておくと、翌日何をすればよいか整理しやすくなります。書くことで必ず眠れるようになるわけではありませんが、夜中に同じことを繰り返し考えてしまう人には、役立つ場合があります。

また、夜遅くまでがんの情報を検索していると、気になる記事を次々に読んでしまい、眠るタイミングを逃すこともあります。調べ物はできるだけ日中に済ませるなど、自分なりの区切りを作ってみるのもよいでしょう。

寝る前の過ごし方を見直す

寝る前は部屋の照明を少し落とし、落ち着いて過ごせる時間を作ってみましょう。カフェインを含むコーヒーやお茶、エナジードリンクなどは、飲む時間や量によって睡眠に影響する場合があります。

一方、寝る前のストレッチやリラックス法などが合うかどうかには個人差があります。「これをしなければ眠れない」と決めつけず、自分が心地よく過ごせる方法を選ぶことが大切です。

不眠には「認知行動療法」という治療もある

眠れない状態が続く場合、医療機関では不眠に対する認知行動療法(CBT-I)が選択肢になります。

CBT-Iは、睡眠を妨げる生活習慣や、眠りに関する考え方・行動を見直していく治療法です。単に「寝る前にスマホを見ない」「早寝早起きをする」といった生活上のアドバイスだけではなく、睡眠の記録や寝床で過ごす時間の調整などを組み合わせ、計画的に進めます。

米国睡眠医学会の診療ガイドラインでは、成人の慢性不眠症に対する第一選択の治療として、CBT-Iが強く推奨されています。

がん患者を対象とした研究でも、CBT-Iによって不眠症状や睡眠の質が改善することが報告されています。ただし、研究対象となった患者の状態や治療方法はさまざまで、すべての患者に同じ効果が得られるわけではありません。

また、慢性不眠症に対する推奨を、がんと診断された直後の一時的な不眠にそのまま当てはめることはできません。診断直後の不眠では、まず何が眠りを妨げているのかを確認し、症状や状況に合わせて対応を考えることが重要です。

日本では、CBT-Iを専門的に受けられる医療機関が限られる場合もあります。関心がある場合は、主治医や医療スタッフに相談してみましょう。

睡眠薬を使ってもいい?

「睡眠薬を飲み始めると、やめられなくなるのでは?」と心配する人もいるでしょう。

睡眠薬には複数の種類があり、作用や副作用、長期間使用した場合の注意点はそれぞれ異なります。薬によっては依存や離脱症状に注意が必要なものもありますが、すべての睡眠薬が同じ性質を持っているわけではありません。

がんと診断された直後など、不安が強く、十分に眠れない状態が続いている場合には、医師が睡眠薬の使用を検討することもあります。必要に応じて薬を使うことは、特別なことではありません。

ただし、睡眠薬には翌朝の眠気やふらつきなどの副作用があり、ほかに使用している薬との組み合わせにも注意が必要です。薬の種類や使う期間は、症状や体の状態に合わせて医師と相談して決めます。

すでに睡眠薬を使用している場合も、自己判断で量を増やしたり、急に中止したりせず、医師や薬剤師に相談してください。

また、眠れない原因が痛みや薬の副作用にある場合は、睡眠薬だけでなく、原因となっている症状や薬の調整が必要になることもあります。

どのくらい眠れなかったら、病院に相談する?

「眠れない日が何日続いたら相談するべき?」という疑問もあるかもしれませんが、相談するまでに決まった日数を待つ必要はありません。

眠れないことで日中の生活に支障が出ている、疲れているのに休めない、夜になるのが憂うつになっている。そんなときは、数日であっても主治医や看護師に伝えてかまいません。

特に、痛みや息苦しさなどの症状で眠れない場合や、強い不安、気分の落ち込みが続いている場合は、早めに相談しましょう。症状によっては、不眠そのものとは別の対応が必要になることもあります。

診察では、次のようなことを伝えると、原因や対処法を考える助けになります。

  • いつ頃から眠れなくなったか
  • 寝つけないのか、夜中や早朝に目が覚めるのか
  • おおよそ何時間眠れているか
  • 日中の眠気や疲労感、仕事や家事への影響
  • 痛みや不安、服用している薬など、気になっていること

細かく記録していなくても大丈夫です。「診断されてから寝つきが悪く、毎晩何度も目が覚めます」と伝えるだけでも、相談のきっかけになります。

必要に応じて、睡眠の専門外来や精神科、心療内科、緩和ケアチームなどにつないでもらえる場合もあります。緩和ケアは終末期だけのものではなく、がんと診断された時点から、つらい症状や気持ちの問題について相談できる医療です。

キャンエビのまとめ

  • がんと診断された後は、不安や緊張、体の症状、生活リズムの変化などによって眠れなくなることがある
  • 数日眠れなかったからといって、それだけでがんが進行するとは言えない
  • 朝の光を浴びる、起床時刻をそろえる、眠れないときに無理に寝ようとしないなど、生活の中で試せる工夫がある
  • 慢性的な不眠には認知行動療法(CBT-I)が有効な治療法として推奨されており、がん患者を対象とした研究でも改善が報告されている
  • 睡眠薬が役立つ場合もあるが、薬の種類や副作用、ほかの薬との組み合わせについて医師と相談する必要がある
  • 不眠がつらいときは、何週間も我慢する必要はない。がん治療が始まる前でも、主治医や看護師に相談できる

参考文献

  1. Cochrane「不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)はがん患者の助けになるか?」
  2. Cognitive behavior therapy for insomnia in cancer patients: a systematic review and network meta-analysis(2022年)
  3. American Academy of Sleep Medicine「成人の慢性不眠症に対する行動療法・心理療法の診療ガイドライン」(2021年)
  4. Treatment strategy for insomnia disorder: Japanese expert consensus
  5. 日本睡眠学会「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」
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