楽しみにしていた旅行、友人との食事、コンサートのチケット。がんと診断された途端、カレンダーに書き込んでいた予定を見て、「これも全部キャンセルしなければいけないのかな」と考えてしまうことがあります。
でも、がんと診断されたからといって、すべての予定を取りやめる必要があるわけではありません。 体調に問題がなく、検査や治療に支障がなければ、これまでどおり楽しめる予定もあります。
一方で、治療の開始時期や体調によっては、日程を変更した方がよい場合もあります。何を基準に判断すればいいのか、身近な外出から宿泊旅行まで考えてみましょう。
がんと診断されても、普段どおり出かけていい?
がんと診断された後でも、必ずしも安静にしている必要はありません。症状がなく、普段どおりに生活できる人もいます。近所で買い物をしたり、友人と食事をしたり、趣味を楽しんだりすることが、すぐに禁止されるわけではありません。
国立がん研究センター東病院も、治療中の外出について、感染対策に注意しながら気分転換をすることの大切さを案内しています。
ただし、同じがん患者でも、病状や治療内容によって注意点は異なります。例えば、抗がん剤治療によって白血球が減少している時期には、人混みや換気の悪い場所を避けるなど、感染症への配慮が必要になることがあります。
ここで区別したいのは、がんと診断されたばかりで治療が始まっていない時期と、治療中では状況が違うということです。診断を受けたという理由だけで、治療中のすべての注意事項が当てはまるわけではありません。
まずは現在の体調と、これから予定されている検査・治療を確認することから始めましょう。
予定を決める前に、確認しておきたいこと
予定をそのままにするか、変更するか、キャンセルするか。判断するときには、次のような点を確認すると整理しやすくなります。
- 今の体調: 痛み、疲労感、発熱、息切れなど、外出に影響する症状はないか
- 検査や治療の日程: 予定が重なっていないか、治療開始が近くないか
- 移動や活動の負担: 長時間の移動や立ちっぱなしの時間がないか
- 予定の変更しやすさ: 当日キャンセルできるか、日程を変えられるか
例えば、近所のカフェで友人と会う予定なら、体調を見ながら当日判断できるかもしれません。一方、飛行機を使う旅行や数日間の出張では、早めに医師に相談しておいた方がよい場合があります。
また、検査結果が出る前や治療方針が決まる前は、今後の日程がまだ分からないこともあります。その段階で、数か月先の予定まですべて取り消す必要はありません。まずは予約の変更期限を確認し、判断できる時期まで待つという選択肢もあります。
友人との食事やコンサートはどうする?
友人とのランチや映画、コンサートなどは、体調がよければ楽しめることもあります。がんと診断された後も、好きなことをする時間を持つのは大切なことです。
ただし、長時間立ち続けるイベントや、人が密集する会場などは、体調や治療状況によって負担になる場合があります。治療によって感染症にかかりやすくなっている時期には、混雑した場所への外出について医療スタッフに相談しましょう。
また、体調が変わる可能性があるなら、一緒に行く人に「当日、体調によっては行けなくなるかもしれない」「疲れたら途中で帰るかもしれない」と伝えておく方法もあります。
病気のことを詳しく説明したくなければ、無理に話す必要はありません。予定を変更する可能性があることだけ伝えておいてもよいでしょう。
旅行の予定があるときは?
宿泊を伴う旅行では、日帰りの外出よりも確認しておきたいことが増えます。特に、長距離移動や海外旅行を予定している場合は、予約や出発の前に主治医へ相談することをおすすめします。
まず大切なのは、旅行が検査や治療の予定に影響しないかという点です。がんの種類や病状によっては、治療を早く始める必要がある場合もあります。旅行のために検査や治療を延期してよいかどうかは、自己判断せず医師に確認しましょう。
治療中の場合は、旅行の日程によって副作用が強く出る時期と重なることもあります。どの時期なら比較的予定を立てやすいか、相談できる場合もあります。
また、旅行先で体調を崩したときのことも考えておきたいところです。国内旅行なら、必要な薬やお薬手帳を持参し、緊急時に連絡できる医療機関を確認しておくと役立ちます。
海外旅行では、渡航先の医療事情や必要な予防接種、薬の持ち込み条件なども確認が必要です。治療内容によっては、特定の予防接種を受けられない場合もあります。
飛行機に乗っても大丈夫?
がんと診断されたからといって、飛行機に乗れなくなるわけではありません。ただし、貧血や呼吸器の症状がある場合、特定の手術を受けた直後などには、搭乗に注意が必要になることがあります。
また、がんや一部の治療は血栓ができるリスクと関係しており、長時間座ったまま移動することにも注意が必要です。
飛行機を利用する予定がある場合は、病状や治療内容を踏まえて、主治医に確認しておきましょう。航空会社によっては、健康状態に関する書類が必要になる場合もあります。
旅行保険やキャンセル料も確認しておこう
旅行の予定を変更する可能性があるなら、予約時のキャンセル条件も大切です。ホテルや交通機関によっては、出発の数日前まで無料でキャンセルできたり、日程を変更できたりするプランがあります。
すでに予約している場合は、まずキャンセル料がいつから発生するのか確認してみましょう。治療日程がまだ決まっていないなら、キャンセル期限まで判断を待てる場合もあります。
もう一つ注意したいのが、旅行保険です。
がんと診断された後に旅行保険へ加入する場合、病気の申告が必要だったり、がんに関連する医療費が補償対象外になったりすることがあります。すでに加入している保険でも、診断後の取り扱いを確認した方がよい場合があります。
特に海外旅行では、現地で医療機関を受診した際の費用が高額になることもあります。保険に入っているというだけで安心せず、がんに関連する診療費や、病気による旅行のキャンセルが補償されるかを確認しておきましょう。
なお、旅行保険の加入条件や補償範囲は商品によって異なります。クレジットカード付帯の保険についても同様です。具体的な条件は、契約先の保険会社に確認してください。
仕事の出張は、どう調整する?
仕事の出張は、ほかの人の予定にも関わるため、早めに調整が必要になることがあります。
検査や治療の日程が分かっている場合は、出張と重ならないか確認しましょう。日程の変更が必要なら、上司や担当者に相談します。
このとき、必ずしもがんという病名を職場全体に伝える必要はありません。「検査と通院の予定があるため、出張の日程を調整したい」といった伝え方もできます。
オンライン会議への変更や、ほかの人に出張を代わってもらうなど、仕事の内容によっては別の方法を考えられるかもしれません。
ただし、出張に伴う移動や業務に健康上の制限がある場合は、必要な範囲で職場に伝え、無理のない働き方を相談することが大切です。
主治医には、どう聞けばいい?
旅行や大きな予定について相談するときは、行き先や日程、移動手段などを具体的に伝えると、医師も判断しやすくなります。
例えば、
「来月、2泊3日の旅行を予定しています。新幹線で移動するのですが、これからの検査や治療に影響はありますか?」
「来週、コンサートに行く予定があります。治療後の体調や感染症のリスクについて、気をつけた方がいいことはありますか?」
といった聞き方で十分です。
また、「行ってもいいですか?」だけでなく、「どんな症状が出たら見合わせた方がいいですか?」「旅行先で体調が悪くなったら、どう対応すればいいですか?」と確認しておくのも役立ちます。
旅行の予定を話したからといって、必ず中止を勧められるわけではありません。医療スタッフと相談することで、予定を実現するための方法が見つかることもあります。
予定をキャンセルした方がいいのは、どんなとき?
体調がよくないときは、無理に予定をこなさないことも大切です。
例えば、発熱、強い痛み、息切れ、出血、著しい疲労などがある場合は、外出や旅行よりも体調の確認を優先する必要があります。症状によっては、単に予定を取りやめるだけでなく、速やかな医療機関への連絡や受診が必要です。
また、治療によって白血球が減少している場合や、手術直後などには、外出先や移動方法に制限が必要になることもあります。医療スタッフから個別の注意を受けている場合は、その指示を優先してください。
予定を変更することになっても、楽しみそのものを諦める必要はありません。体調や治療が落ち着いた時期に改めて計画することもできます。
キャンエビのまとめ
- がんと診断されたからといって、旅行や外出の予定をすべてキャンセルする必要はない
- 予定を判断するときは、現在の体調、検査・治療の日程、移動の負担などを確認する
- 近場の外出と、宿泊旅行や海外旅行では、必要な準備や注意点が異なる
- 治療中は、感染症のリスクや副作用が出やすい時期などに配慮する
- 旅行保険は、がんに関連する医療費やキャンセル費用が補償されるかを確認する
- 長距離移動や旅行を予定している場合は、主治医に日程や行き先を伝えて相談する
- 予定を変更することになっても、楽しみをすべて諦める必要はない






