「食べなければ、がん細胞に栄養が届かなくなって死ぬ」。そんな話を聞くと、治療のために食事を減らした方がいいのかと気になるかもしれません。
結論はNoです。断食によって、がん細胞だけが死ぬとは証明されていません。 がん治療中に、治療効果を期待して自己判断で断食することは勧められません。
なぜ「断食でがんが弱る」と言われるの?
細胞や動物を使った研究では、食事を制限したときに体内の代謝に関わる働きが変わり、一部のがんが抗がん剤の影響を受けやすくなる可能性が調べられています。
ただし、これは「人が断食すれば、がん細胞だけが死ぬ」という意味ではありません。食事をとらなければ、がん細胞以外の体も栄養を得られなくなります。実験で見られた変化と、患者さんの治療成績がよくなることは分けて考える必要があります。
人を対象にした研究ではどうだった?
人を対象に、抗がん剤治療と食事制限を組み合わせる研究も行われています。たとえばDIRECT試験では、HER2陰性の乳がん患者を対象に、抗がん剤治療に「断食模倣食」と呼ばれる食事を組み合わせました。これは決められた期間に食事内容や摂取量を制限する方法で、何も食べない断食とは異なります。
この試験では、重い副作用の頻度や、手術で調べた病理学的完全奏効率に、通常の食事をとった群との差は示されませんでした。一方、画像上の治療反応には改善を示唆する結果もありました。ただ、食事を計画どおり続けることが難しかった参加者も多く、この結果だけで断食模倣食を治療法として勧めることはできません。まして「がん細胞だけが死んだ」と示した試験ではありません。
治療中に自己判断で断食しない方がいい理由
がんや治療の影響で、食欲や食事量が落ちることがあります。そこへ意図的な断食を重ねると、必要なエネルギーや栄養をとりにくくなるおそれがあります。欧州のがん患者向け栄養ガイドラインも、治療上の利益が確認できていないことと栄養不良のリスクから、抗がん剤治療に合わせた断食を勧めていません。
食べたくても食べられないことは、断食とは別の話です。そんなときは無理に食べようとせず、食べられている量や困っていることを治療先に伝えてください。また、手術や検査のために病院から絶食の指示が出た場合は、この記事で扱う「がんへの効果を期待する断食」とは目的が違うので、その指示に従ってください。
キャンエビのまとめ
- 「断食するとがん細胞だけが死ぬ」は、証明されていません。
- 細胞・動物研究や一部の臨床試験で調べられていることを、そのまま「断食ががんに効く」とは言えません。
- 治療効果を期待して、自己判断で食事を断つことは勧められません。食べられないことで困っている場合は、治療先に伝えてください。
参考文献
- Fasting during cancer treatment: a systematic review(系統的レビュー)
- ESPEN practical guideline: Clinical Nutrition in cancer(診療ガイドライン)
- Fasting mimicking diet as an adjunct to neoadjuvant chemotherapy for breast cancer in the multicentre randomized phase 2 DIRECT trial(第II相ランダム化比較試験)
- がんと食事|国立がん研究センター がん情報サービス(患者向け情報)








