高齢者は抗がん剤を受けない方が長生きできるのか? — 年齢だけで決めてはいけない理由
年齢だけを理由に、抗がん剤を受けないほうが長生きできるとは言えません。治療によって生存期間の延長や症状の改善が期待できる人がいる一方、副作用や生活への負担が大きくなる人もいます。
治療を行うかどうかは、がんの種類や病期、体力、臓器の働き、持病、生活状況、治療の目的、本人の希望などを踏まえて判断します。
この記事では、主に化学療法を含む「がん薬物療法」について説明します。治療の効果や副作用は、薬の種類によって大きく異なります。
今回の検証で分かったこと
高齢というだけで、抗がん剤を受けないほうがよいとは判断できません。同じ年齢でも、体の状態や治療への耐えやすさには大きな個人差があります。
治療によって期待できる効果と、副作用や生活への負担を比較し、必要に応じて治療内容を調整することが大切です。
年齢だけでは、治療を受けるかどうか判断できません
同じ年齢でも、体力や臓器の働き、持病、認知機能、栄養状態、周囲から受けられる支援などは一人ひとり異なります。そのため、年齢だけで抗がん剤の効果や副作用を予測することはできません。
高齢でも治療による利益が期待できる人がいる一方、副作用や入院、生活機能の低下などの負担が利益を上回る人もいます。治療の目的と、期待できる効果・負担を踏まえて個別に判断します。
ここが要点
高齢というだけで治療を受けないと決めるのではなく、体の状態や本人の希望も含めて考えることが大切です。
高齢者でも抗がん剤で延命や症状改善が得られる人がいる
がん種や病期、治療目的によっては、高齢でも抗がん剤で生存期間の延長や症状の改善が期待できる場合があります。ガイドラインはそうした利益の可能性を前提に、年齢単独での中止を推奨していません。
臨床試験のサブグループ解析や観察研究では高齢者での有益例が報告されています。ただし、がん種や薬剤ごとに効果の大きさは大きく異なり、RCTの対象や治療背景を確認しないと一般化は困難です。
- 標準治療で延命が確認されている状況では、高齢者でも一定の利益を期待できることがある。
- 効果の程度はがん種・病期・使用薬剤・個々の体力や臓器機能に依存する。
ここが要点
高齢=無効ではなく、適切な患者では治療利益が見込める。
高齢者では、副作用や生活への影響に注意が必要です
高齢者では、臓器機能や体力の低下、複数の持病や薬の併用などにより、副作用が強く出ることがあります。副作用による入院や、日常生活の動作が難しくなる可能性にも注意が必要です。
ただし、治療への耐えやすさには大きな個人差があります。年齢だけでリスクを判断せず、治療前の体の状態や生活状況を確認することが大切です。
- 持病や服用している薬が、副作用に影響することがある
- 肝臓や腎臓などの働きによって、薬の量を調整する場合がある
- 治療による生活機能や認知機能への影響も考慮する
年齢だけでは分からない体の状態を評価します
高齢者機能評価では、体力や日常生活の動作だけでなく、認知機能、栄養状態、持病、服薬状況、心理状態、家族などから得られる支援についても確認します。
「G8」は、より詳しい評価が必要かを判断するための簡易的な質問票です。「CARGスコア」は、主に化学療法による重い副作用のリスクを予測するために使われます。
これらの評価だけで治療方針が決まるわけではありませんが、薬の種類や量、副作用への対策、生活上の支援などを検討する材料になります。
- 高齢者機能評価:体力、認知機能、栄養、持病、服薬、生活状況などを確認する
- G8:詳しい評価が必要な人を見つけるための質問票
- CARGスコア:化学療法による重い副作用のリスクを予測するためのツール
治療の選択肢は二択ではない(減量・単剤・支持療法・緩和中心など)
『抗がん剤を受けるか受けないか』は二択ではなく、投与量や頻度の調整、単剤化、副作用の少ない薬への変更、支持療法の充実、あるいは緩和ケアを中心とした方針など複数の選択肢があります。
抗がん剤を行わない場合でも、痛みや吐き気、呼吸困難などの症状コントロールや生活の支援は受けられ、QOLを保つための医療は継続して提供されます。
- 標準量のまま行う以外に、減量や間隔延長、単剤療法などで毒性を下げる選択がある。
- 支持療法や緩和ケアは治療と並行して行え、症状改善やQOL維持に資する。
高齢者の治療には、研究上の限界もあります
がんの臨床試験では、高齢者、特に持病や生活機能の低下がある人の参加が少ない場合があります。そのため、研究で示された効果や副作用が、すべての高齢患者にそのまま当てはまるとは限りません。
研究結果だけでなく、本人の体の状態、治療の目的、希望する生活などを踏まえて判断する必要があります。
キャンエビのまとめ
- 高齢というだけで、抗がん剤を受けないほうが長生きできるとは判断できません。
- 高齢でも治療による利益が期待できる人がいる一方、副作用や生活機能への負担が大きくなる人もいます。
- 年齢だけでなく、体力、臓器の働き、持病、認知機能、栄養状態、生活状況などを確認することが大切です。
- 治療方法によっては、薬の量や投与間隔を調整できる場合があります。
- 治療の目的、期待できる効果と負担、本人が大切にしたい生活を医療チームと共有して治療方針を決めます。
参考文献
- NCCN Guidelines® Insights: Older Adult Oncology, Version 1.2021(診療指針、2021-09-01)
- Practical Assessment and Management of Vulnerabilities in Older Patients Receiving Systemic Cancer Therapy(診療指針)
- ReCAP: Hospitalizations in Older Adults With Advanced Cancer: The Role of Chemotherapy (SEER–Medicare analysis)(観察研究、2018-01-01)
- Predicting chemotherapy toxicity in older adults: development and validation of the CARG toxicity score (Cancer and Aging Research Group) and subsequent validation studies(査読済み論文)
- Systematic review: Older adults underrepresented in cancer clinical trials — meta- and pooled-analyses review (高齢者の臨床試験参加状況を調べたレビュー、2017)
- Older adult participation in cancer clinical trials: A systematic review of barriers and interventions(系統的レビュー、2020-11-01)
- 日本 厚生労働省:第82回がん対策推進協議会 資料 — 高齢がん患者のCGA 利用に関する資料(公的資料、2022)
- Exclusion of Older Adults from Cancer Clinical Trials: Review of the Literature and Future Recommendations(系統的レビュー、2022-03-01)
ご注意
本記事は一般向けの解説です。治療の可否や具体的処方は個別の診察・検査結果に基づいて主治医が判断します。治療や症状に関する不安がある場合は、主治医や担当チームにご相談ください。








