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アメリカでは抗がん剤は使われていないのか?

アメリカでは抗がん剤は使われていないのか?

アメリカでは抗がん剤は使われていないのか?──いいえ、誤りです

米国でも抗がん剤を使った化学療法は、現在も多くのがんや治療場面で行われています。米国国立がん研究所(NCI)の患者向け情報や、がん種別の診療ガイドライン、FDAの承認情報からも確認できます。

ただし、化学療法を受ける患者の割合や治療上の位置づけは、がんの種類、病期、年齢、集計した年代や対象集団によって異なります。そのため、今回確認した資料だけから「米国のがん患者のうち何%が化学療法を受けている」と一つの数字で示すことはできません。

この研究で分かったこと

結論:事実ではありません。米国でも化学療法は広く用いられており、公的機関・専門学会・規制当局の資料がその存在と位置づけを示していますが、利用率や最近の増減はがん種や集団によって異なり、単一の数値で表すのは不適切です。

用語の整理:「抗がん剤」と「化学療法」は同じ意味か?

日常会話では「抗がん剤」と「化学療法」がほぼ同じ意味で使われることがあります。ただし、「抗がん剤」という言葉には、分子標的薬などを含める場合もあります。

現在のがん薬物療法には、従来型の化学療法だけでなく、分子標的薬、免疫療法、ホルモン療法などがあります。海外の情報を読むときは、「抗がん剤を使わない」という説明が、従来型の化学療法だけを指しているのか、薬物療法全体を指しているのかを確認することが大切です。

ここが要点

分子標的薬や免疫療法が使われる場面は増えていますが、それによって米国の化学療法がすべて置き換えられたわけではありません。

実際に米国で化学療法は使われている?

端的に言えば、米国でも化学療法は現在、多くのがんや治療場面で標準的な選択肢として用いられています。

NCIは、化学療法が、がんを治す、再発の可能性を下げる、増殖を抑える、痛みなどの症状を和らげるといった目的で使われると説明しています。また、手術前に腫瘍を小さくする術前化学療法や、手術後に残っている可能性のあるがん細胞を攻撃する術後化学療法としても行われます。

FDAの承認情報でも、従来型の抗がん剤を使う治療や、免疫療法・分子標的薬と化学療法を組み合わせる治療が現在も確認できます。新しい治療が登場したことで選択肢は増えていますが、化学療法そのものが使われなくなったわけではありません。

ここが要点

米国でも化学療法は現在行われています。ただし、すべてのがんや患者に同じように使われるわけではなく、がんの種類や病期などに応じて選択されます

どのくらいの患者が受けている?

化学療法を受ける患者の割合は、がんの種類、病期、年齢、健康状態、集計した年代などによって大きく異なります。

米国のSEERやNCDBなどのがん登録を使った研究では、がん種別・病期別に化学療法を受けた患者の割合が報告されています。ただし、SEERは米国の一部地域を対象としたデータで、化学療法情報にも未把握があります。NCDBも参加医療機関から集めた病院ベースのデータであり、米国の患者全体をそのまま代表するものではありません。

そのため、今回確認した資料だけから「米国のがん患者のうち何%が化学療法を受けている」と一つの数字で示すことはできません。具体的な割合を見る場合は、がんの種類、病期、年齢、調査年代、使用されたデータの範囲を確認する必要があります。

分子標的療法や免疫療法は、化学療法を置き換えた?

分子標的薬や免疫療法の登場によって、がん薬物療法の選択肢は増えました。しかし、これらがすべてのがんで化学療法を置き換えたわけではありません。

実際の治療は、がんの種類や病期、遺伝子変異などの特徴、患者さんの健康状態によって異なります。分子標的薬や免疫療法が優先される場合もあれば、化学療法を単独で行う場合や、ほかの治療と組み合わせる場合もあります。手術前後の治療や、がんの進行を抑えたり症状を和らげたりする目的でも、化学療法は使われています。

FDAの承認情報でも、免疫療法や分子標的薬と化学療法を組み合わせる治療が現在も確認できます。

ここが要点

新しい治療が増えたことで、化学療法が不要になったのではなく、がんの特徴に応じて治療を使い分けたり、組み合わせたりできるようになっています。

化学療法は「効果がなく危険」なの?

化学療法の効果は、がんの種類や病期、使用する薬などによって異なります。すべてのがんに効くわけではありませんが、がんを治す、再発の可能性を下げる、進行を遅らせる、症状を和らげるといった目的で使われています。

一方で、化学療法には副作用があり、ときには重い症状が起こることもあります。副作用を予防・軽減する薬や対処法はありますが、すべてを防げるわけではありません。症状や検査結果によっては、薬の量を減らす、治療を延期する、薬を変更・中止するといった対応が必要になります。

そのため、化学療法を行うかどうかは、期待できる効果と副作用の可能性を比較し、患者さんの希望や健康状態も含めて個別に判断されます。「副作用があるから使ってはいけない」とも、「標準治療だから必ず受けるべき」とも、一律には言えません。

なぜ「米国では抗がん剤を使わない」という誤解が生まれる?

この誤解が生まれる背景の一つとして、分子標的薬や免疫療法など、新しい治療に関する情報の受け取られ方が考えられます。新しい治療が登場したことを、「従来の化学療法はすべて使われなくなった」という意味に受け取ってしまうケースです。

また、特定のがんや患者群で化学療法の使用が減ったという報告があっても、それを米国のがん治療全体に当てはめることはできません。「化学療法を使わない治療がある」ことと、「米国では化学療法が使われていない」ことは別の話です。

「米国では抗がん剤を使わない」という情報を見たときは、次の点を確認してみてください。

  • どのがんについての話か
  • どの病期や患者群についての話か
  • 「抗がん剤」が化学療法だけを指すのか、薬物療法全体を指すのか
  • 「使われる割合が減った」のか、「まったく使われていない」のか
  • いつの情報か
  • 根拠となる資料に、本当にその結論が書かれているか

情報の出所がNCIやFDAなどの公的機関、ASCOなどの専門学会、査読を受けた研究論文であるかも確認しましょう。ただし、有名な機関の資料が引用されていても、その資料が実際の主張を裏づけているとは限りません。

自分に勧められている化学療法について疑問がある場合は、治療の目的、期待できる効果、副作用、ほかに考えられる選択肢を医師に確認してみましょう。

キャンエビのまとめ

  • 「米国では抗がん剤が使われていない」という主張は事実ではありません。米国でも化学療法は現在、多くのがんや治療場面で標準的な選択肢として用いられています。
  • 化学療法を受ける割合は、がんの種類、病期、年齢、調査年代などによって異なります。今回確認した資料だけから、米国全体を表す一つの割合を示すことはできません。
  • 分子標的療法や免疫療法によって治療の選択肢は増えましたが、化学療法がすべての場面で置き換えられたわけではありません。単独で使われる場合も、ほかの治療と組み合わせる場合もあります。
  • 化学療法には効果が期待できる一方で、重い副作用が起こる可能性もあります。期待できる効果、副作用、患者さんの健康状態や希望を踏まえて、治療を個別に判断します。。

参考文献

  1. Chemotherapy to Treat Cancer – National Cancer Institute(米国国立がん研究所、患者向け情報、2025年5月15日レビュー)
  2. Chemotherapy and You: Support for People With Cancer – National Cancer Institute(米国国立がん研究所、患者向け冊子、2024年1月更新)
  3. Types of Cancer Treatment – National Cancer Institute(米国国立がん研究所、患者向け情報)
  4. Oncology Approval Notifications – U.S. Food and Drug Administration(米国食品医薬品局、がん治療薬承認情報)
  5. SEER Treatment Data Limitations – National Cancer Institute(米国国立がん研究所、SEERデータ利用上の注意)
  6. About the National Cancer Database – American College of Surgeons(NCDB公式資料)

ここが要点

この記事は、がん治療に関する一般的な情報を整理したもので、個別の診断や治療を勧めるものではありません。治療の開始・変更・中止については、ご自身で判断せず、担当の医療チームに相談してください。

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