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日本でがんで亡くなる人は本当に増え続けているのか?

日本でがんで亡くなる人は本当に増え続けているのか?

日本でがんで亡くなる人は本当に増え続けているのか?―死亡者数は増加、年齢調整死亡率は減少

結論を先に言いますと、「はい/いいえ」の両方が正しい形になります。年間の死亡者実数は近年の一定期間で増加する年次が見られる一方、年齢構成の影響を除いた年齢調整死亡率や多くのがんでの生存率は改善しています。

つまり『死亡者数が増えている=治療が効いていない』とは言えません。何を数えるか(実数、粗率、年齢調整率、相対生存率)で答えが変わる点を以下で順に整理します。

この研究で分かったこと

日本では、がんで亡くなる人の年間実数は長期的に増加しています。一方、人口の高齢化による影響を除いた年齢調整死亡率は、1990年代半ばをピークに低下しています。

したがって、「死亡者数が増えている=がん治療が進歩していない」とは言えません。死亡者数、粗死亡率、年齢調整死亡率、生存率は、それぞれ示している内容が異なります。

年間の死亡者数(実数)は増えているか?

日本の人口動態統計を見ると、がんによる年間死亡者数は長期的に増加しています。2024年には、男女合わせて38万4,111人ががんで亡くなりました。

死亡者数が増えている主な背景は、がんになりやすい高齢者が人口に占める割合の増加です。そのため、死亡者数の増加だけを見て「治療が効いていない」と判断することはできません。

ここが要点

死亡者数の実数は増えていますが、その主な背景には日本の人口の高齢化があります。

粗死亡率(人口10万人当たり)はどう解釈するか?

粗死亡率は、人口10万人当たりで何人ががんで亡くなったかを示す指標です。ただし、年齢構成の違いは調整されていないため、高齢者の割合が増えると、がんになる危険性が変わらなくても上昇することがあります。

そのため、粗死亡率だけで治療の効果やがん対策の成果を判断することはできません。

ここが要点

高齢化の影響を含む粗死亡率と、その影響を除いた年齢調整死亡率を分けて見る必要があります。

年齢調整死亡率ではどうか?

年齢調整死亡率は、人口の年齢構成の違いを調整して比較する指標です。日本のがん全体の年齢調整死亡率は、1990年代半ばをピークに低下しています。

ただし、すべてのがんで低下しているわけではありません。膵臓がんや女性の乳がんなど、近年も上昇傾向が見られるがんがあります。

また、数値は使用する基準人口によって変わるため、昭和60年モデル人口と平成27年モデル人口など、異なる基準で計算された数値をそのまま比較することはできません。

ここが要点

高齢化の影響を除くと、がん全体の死亡率は低下していますが、がんの種類によって傾向は異なります。

がん治療は進歩しているのか?――死亡数と治療成績の関係

がんの治療成績は、5年生存率やステージ別生存率など複数の指標から評価されます。がん登録のデータでは、多くのがんで5年相対生存率が長期的に改善しています。

ただし、生存率の改善には治療の進歩だけでなく、検診による早期発見や診断技術の変化なども影響します。そのため、生存率だけから治療効果の向上を判断することはできません。

一方、がんによる死亡者数の増加には人口の高齢化が大きく影響しています。死亡者数だけを見て「治療が効いていない」と結論づけるのも適切ではありません。

ここが要点

死亡者数と治療成績は同じ指標ではありません。治療の進歩を考える際は、生存率や年齢調整死亡率などを総合的に見る必要があります。

がんの種類や性別によって傾向は異なる

がん全体の年齢調整死亡率は低下していますが、すべてのがんで同じ傾向が見られるわけではありません。

近年は、胃がん、肝がん、肺がんなどで低下傾向が見られる一方、膵臓がんや女性の乳がん、子宮がん、卵巣がんなどでは上昇傾向が見られます。子宮頸がんや男性の前立腺がんなど、横ばいのがんもあります。

こうした違いには、罹患率、検診や早期発見、治療の進歩、喫煙などの生活習慣を含む複数の要因が関係しています。

参考:[5] [2] [3]

ここが要点

「がん全体」の傾向だけでなく、がんの種類や性別も分けて見る必要があります。

統計を比較するときの注意点

がん統計を比較するときは、死亡者数、粗死亡率、年齢調整死亡率、生存率のどれを示しているのかを確認する必要があります。また、年齢調整死亡率は、同じ基準人口で計算された数値同士を比較します。

院内がん登録は、その医療機関で診療を受けた患者を対象とします。一方、全国がん登録は、日本に住む人に発生したがんを対象としており、集計対象が異なります。

ここが要点

名称が似た統計でも、対象者や計算方法が異なる場合があります。

キャンエビのまとめ

  • 日本のがんによる年間死亡者数は、長期的に増加しています。主な背景は人口の高齢化です。
  • 高齢化の影響を除いた年齢調整死亡率は、1990年代半ば以降、がん全体では低下しています。
  • がんの種類や性別によって、低下・横ばい・上昇と傾向は異なります。
  • 死亡者数の増加だけを根拠に「がん治療が効いていない」と判断することはできません。

参考文献

  1. 人口動態統計年報 第15表 悪性新生物の主な部位別にみた性別死亡数の年次推移(公的資料)
  2. がんの統計(がん情報サービス) — 年次推移ページ(研究機関の公式発表)
  3. 最新がん統計(がん情報サービス) — 概要ページ(研究機関の公式発表)
  4. 『平成27年(2015年)モデル人口』による年齢調整死亡率データアーカイブ(研究機関の公式発表)
  5. がんの統計 2023(一般向け冊子・データ)(研究機関の公式発表、2023)
  6. 院内がん登録 生存率集計(報道・公表ページ) — 3年・5年・10年生存率等(研究機関の公式発表)
  7. 地域がん登録 全国がん罹患モニタリング集計(2009-2011 診断例)5年相対生存率(公表)(研究機関の公式発表、2020-04-15)
  8. 『がん罹患・死亡・有病数の長期予測』等の解析(がん対策研究所)(研究機関の公式発表)
  9. 全国がん登録 データ利用マニュアル/情報提供マニュアル(厚生労働省)(公的資料)

ご注意

この記事は公的統計とがん登録等の公表資料を基に統計の見方を整理する目的で作成しています。個別の診療・治療選択については主治医や専門医にご相談ください。

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