治療が始まる前は、副作用がどのくらい出るのか、いつもの生活をどの程度続けられるのか、まだ分からないことがたくさんあります。だから、仕事も家事も今のうちに全部組み替えておかなければ――と考えなくて大丈夫です。
治療前にやっておきたいのは、完璧な準備ではなく、「困ったときに選べる逃げ道をいくつか作っておくこと」。仕事・家事・通院について、最初に確認しておきたいことを整理します。
仕事:まずは治療の予定をざっくり確認
仕事の調整のために最初に知っておきたいのは、治療の大まかなスケジュールです。
通院の頻度や1回の所要時間、入院の可能性などが分かれば、「この日は休んだ方がよさそう」「午前休では足りないかもしれない」といった予定を考えやすくなります。
ただし、治療前の段階では副作用の出方までは分かりません。
治療当日は比較的元気でも、翌日や数日後に疲れが出ることもあります。最初から勤務予定を完全に固定するより、実際の体調を見ながら調整できる余地を残しておく方が現実的です。
職場に病名や治療についてどこまで伝えるかにも、一律の正解はありません。必要に応じて上司や人事、産業医などに、休暇・時短勤務・在宅勤務など利用できる制度があるか確認してみましょう。
治療前の仕事チェック
- 治療・通院はどのくらいの頻度になりそう?
- 1回の通院にはどのくらい時間がかかりそう?
- 入院する可能性はある?
- 休暇・時短・在宅勤務など、使える制度はある?
- 急に休むことになった場合、誰に連絡すればいい?
すべてを治療開始前に決める必要はありません。「体調によって予定を変更するかもしれない」と分かっているだけでも、後から調整しやすくなります。
家事:元気な日ではなく「できない日」を考える
治療前に、家事を全部分担し直す必要もありません。考えておきたいのは、「もし数日間あまり動けなかったら、何に困るだろう?」ということ。料理、買い物、掃除、洗濯、子どもの送迎、ペットの世話など、普段していることをざっくり思い浮かべてみましょう。
その中で、「これは止まると困る」というものだけ、代わりの方法を考えておけば十分です。家族や友人に頼むだけでなく、冷凍食品、ネットスーパー、宅配、配食サービスなどを使う方法もあります。
「治療中も今まで通り家事をしなければ」と考えるより、体調が悪い日に「今日はこれでいい」と選べる方法を考えておく方が役に立ちます。
家事・生活チェック
- 体調が悪い日に、止まると困る家事は何?
- 家族や友人に頼めそうなことはある?
- 食事や買い物を宅配などで代用できる?
- 子どもの送迎やペットの世話など、代わりが必要なことはある?
- 「今日はやらなくてもいい」と決められる家事はある?
全部に代替案を用意しておかなくても大丈夫です。まずは「一番困りそうなこと」から考えてみましょう。
通院:「病院まで行くのに30分かかる」だけでは時間を読めない
通院時間を考えるとき、意外と忘れやすいのが待ち時間など病院の中で過ごす時間です。がん治療では、採血、検査、診察、治療、会計、薬局などが組み合わさることがあります。
そのため、家から病院までの移動時間だけではなく、受付から帰宅まで全体でどのくらいかかりそうかを考えておくと、仕事や家事の予定を立てやすくなります。
所要時間は治療内容や病院によって大きく異なります。
「普段の治療日は、受付から会計までどのくらいかかりそうですか?」
と病院で聞いてみるのが一番確実です。初回は説明や確認などで普段より時間がかかる場合もあるため、最初の数回は予定を詰め込みすぎない方がよいでしょう。
また、行きは一人で行けても、帰りに疲れていることもあります。毎回付き添いを頼む必要はありませんが、必要になったときに迎えを頼める人や、タクシーなど別の帰宅方法があるか考えておくと「逃げ道」になります。
通院前のチェック
- 家から病院までどのくらいかかる?
- 採血・診察・治療・会計まで、全体ではどのくらいかかりそう?
- 初回は普段より時間がかかる?
- 帰りに体調が悪くなった場合、別の帰宅手段はある?
- 必要な日に付き添いを頼める人はいる?
特に治療開始直後は、自分がどの程度動けるのか分からなくて当然です。何回か通院してから、自分に合ったパターンを作っていけば大丈夫です。
仕事や生活のことも「がん相談支援センター」で相談できる
治療そのもの以外にも、
「仕事を続けられるかな」
「休んだら収入はどうなる?」
「家族のことを誰に相談すればいい?」
など、治療が始まると生活上の疑問が出てきます。
こうしたことも、がん相談支援センターで相談できます。
がん相談支援センターは全国のがん診療連携拠点病院などに設置されており、治療だけでなく、仕事やお金、家族とのことなどについても相談できます。自分が通院していない病院の相談支援センターを利用することもできます。
仕事を休む可能性がある場合は、勤務先の休暇制度や、自分が利用できる所得保障制度について確認しておくのもよいでしょう。
会社員など一定の条件を満たす人では、健康保険の「傷病手当金」を利用できる場合があります。加入している健康保険や働き方によって利用できる制度は異なるため、「自分の場合は何が使える?」と相談してみましょう。
制度を全部自分で調べなくても大丈夫です。どこに相談すればいいか分からないときに、最初の入口としてがん相談支援センターを使う方法もあります。
とりあえず、この3つだけ確認しておきましょう
ここまで読んで、
「結局、治療前にいろいろ準備しなきゃいけないのでは……」
と思った人もいるかもしれません。
でも、全部やる必要はありません。
治療前なら、まずはこの3つだけでも大丈夫です。
- 治療のスケジュールと、通院にかかりそうな時間を確認する
- 体調が悪い日に、仕事や家事で代わってもらえそうなことを一つ考える
- 困ったときに相談できる場所を一つ知っておく
治療が始まる前には、まだ分からないことがたくさんあります。
思っていたより普通に動けるかもしれませんし、予想していなかった日に疲れが出るかもしれません。
だから、数か月先までの人生全部を組み替えておく必要はありません。
キャンエビのまとめ
- 治療前から仕事や生活を完璧に組み替える必要はありません。
- 仕事は、まず治療スケジュールと利用できる制度を確認しておきます。
- 家事は「体調が悪い日に止まると困ること」から、代わりの方法を考えます。
- 通院は移動時間だけでなく、採血・診察・治療・会計などを含めた時間で考えます。
- 仕事や生活、お金については、がん相談支援センターでも相談できます。
準備しておくのは、完璧な予定ではなく、予定どおりにいかなかったときの逃げ道で十分。
治療が始まって自分の体調のパターンが分かってきたら、その都度、生活の形を調整していけば大丈夫です。
参考文献
- がん相談支援センターとは(がん情報サービス/国立がん研究センター)(公的な患者向け情報)
- がん相談支援センター(東京都がんポータルサイト)(公的な患者向け情報)
- 傷病手当金のご案内(厚生労働省 向け資料)(公的資料)
- 化学療法の所要時間に関する病院のFAQ/外来化学療法の説明(例:国立病院機構 埼玉病院、地域がん診療連携拠点病院等)(医療者監修サイト)
- 通院交通費や福祉タクシー等の助成(自治体・国の制度の例と注意点)(公的資料)








